トランプの税制改革が生む悲惨な未来

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これでは、経済低迷の要因である長期的問題が全く解決しないどころか、悪化する可能性が高い。政府は、法人税を削減すれば投資と雇用が促進されると説明するが、これは経済の仕組みを誤解している。

例えばショッピングモール内の店舗では、クリスマスの買い物シーズンに従業員を増やすことが多い。これは売り上げの増加が予想されるからで、減税の効果ではない。減税したとしても、クリスマスなどの商戦期が全てなくなれば、従業員の雇用は増えるだろうか? 可能性はあるが、その効果が最小限であることは素人でも分かるはずだ。

また政府は、富裕層は投資を行うと説明する。だが実際には、富裕層は投資ではなく、貯金をするのだ。ここでは、「投資」という言葉が2つの異なる活動に使われていることで混乱が生じている。事業が生産能力を増強するときに行う「設備投資」は、新工場や店舗の設置、機械類の刷新や古い装置の交換を指す。こうした投資は雇用を生み出すので、奨励されるべきだ。

一方、株式を購入する「金融投資」は、雇用を生み出さない。金融投資は富裕層が行う貯蓄の一種だ。全株式売り上げの99.9%は、株式を発行する会社からの購入ではなく、他の株式所有者から買い付けるものだ。発行者が新たに現金を獲得し、設備投資に活用できるのは、株式が最初に発行されたときのみ。そのため、富裕層は投資によって雇用を創出するのではなく、貯蓄によって需要を下げていると言える。

貯蓄が悪いと言いたいわけではない。自分の金は好きなように使ってよい。しかし、経済活動促進を目的とした減税で、富裕層を対象とするのは全く筋が通らない。

米政府が提案した法案はとてつもない時間の無駄であり、実現すれば状況は確実に悪化するだろう。収入格差が広がった今、中間層が死にかけていることは明白であり、両党は大統領選中からこの問題を確固たる事実として扱ってきた。大学の授業料免除を課税所得とするなど、いったい誰が考え付いたのか? さまざまな点で非論理的で有害なこの法案が議会で可決される見込みがあるとは、到底思えない。

とは言え、最近の政治は予想外の連続だ。今回ばかりは予想が裏切られないことを祈ろう。

編集=遠藤宗生

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