彼らは、スコットランドのゴルフがもっとシンプルだった1800年代後半から1900年代前半ごろの「スコットランドゴルフの神髄を取り戻す」ことを理想とした。プレイヤーになくしたボールを探させて時間を浪費させるのではなく、そもそもゴルフの基本である「Errors and recovery」、失敗とそこからの挽回に時間を割くことのできるコースを目指したのだ。
キャッスル・ステュアートでプレイする筆者(右)と加茂氏
それは、ほとんどのグリーンをティーグラウンドから見ることができ、コースガイドなどなくても、目で見て、風の音を聞いて、コースを感じて、どういうショットを打つか選択することができるコース。すなわち、ゴルフの面白さの神髄を味わえるコースをつくるということであった。
実際、世界のトッププロが回ったときの平均フェアウェイキープ率は14ホール中9回。パーオン回数は18ホール中14回。3バーディー、12パー、3ボギーで丁度パーだったという。この結果を見ても、いかに「Errors and recovery」ができる面白い設計かがわかるだろう。
またキャッスル・ステュアートのビューは、各所に素晴らしい景観を誇る英国でもトップクラスである。「Black Isle」と呼ばれる黒色の半島はつとに有名だが、コース全体が海をかすかに見下ろし、夕方のマリー湾からの霧が立ち込めてきて、上からは夕陽が差し込む。我々が回った午後から夕暮れにかけては、まさに天国でプレイしているかのような美しさであった。これを経験しないでゴルフのことを語ったら、神様に叱られるんだろうなというくらいの至極の時間と風景である。
マリー湾にかかる美しい夕日
プレイを満喫した我々は、スコットランドの伝統ある名門ゴルフ場とは一味も二味も違うモダンなクラブハウスへ戻った。プレイ後を楽しんでもらうというクラブのポリシー、いわゆる「Total experience」に則り、いつまでも続く長い夕焼けを楽しみながら、最上階のラウンジで美味しいウイスキーをいただいたのであった。
キャッスル・ステュアートは、すでにスコティッシュ・オープンを11、12、13、16年と4回も開催している。スコットランドゴルフ協会のただならぬ意気込みが感じられるのは嬉しいことだ。
古い歴史と新しい挑戦。スコットランド魂に乾杯!
こいずみ・やすろう◎FiNC 代表取締役CSO/CFO。東京大学経済学部卒。日本興業銀行、ゴールドマン・サックスで計28年活躍。現役中から、インターナショナルスクール・オブ・アジア軽井沢・発起人、TABLE FOR TWO Internationalのアドバイザーなど社会貢献活動にも参加。お金のデザイン社外取締役、WHILL、FC今治のアドバイザー。