「労働時間短縮」以上の働き方改革、見える化がカギに

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すでに10年以上にわたって働き方改革を進めてきたマイクロソフトでは、現在、Office 365に搭載された「MyAnalytics」というツールで社員・組織の生産性向上を図っている。同ツールはOffice 365で作成したファイルおよび操作履歴などのビックデータをクラウドに集め、機械学習で分析。「時間の使い方」「よく一緒に仕事をする同僚」「会議時間」や「メール時間」「残業時間」「フォーカス時間」などを可視化する。

社員・組織の動きが可視化できれば、ムダを排除することも可能になる。一例として、日本マイクロソフトのとある部門では、MyAnalytics利用後1カ月で、会議時間を27%も削減することに成功したという。

AIを使った業務の見える化は、人間に「インサイト=気づき」を与えるという用途に分類できるかもしれない。言い換えれば、人間の職種でいうところの経営コンサルタントのように、具体的なデータを提示することで社員・組織の変化を促すというものだ。

労働時間の短縮という文脈で見たときに、AIをより直接的に使っていく方法もある。例えば、自然言語処理技術や画像解析技術を使って、それまで人間がやるしかなかった作業を自動化するというものだ。

リクルートでは、AIによるアタック原稿(クライアントへの提案時に営業マンが渡す仮原稿)の作成・校閲、類似画像のレコメンドなどを自動化している。ともに、それまで人力で行ってきた作業をAIで代替し、作業の効率化を達成するための施策だ。なお、各企業に大量に生まれる紙データ(アナログデータ)を、効率的にデジタルデータに変換できるインテリジェントOCR(光学的文字認識)も、労働時間短縮に直接的に資するAIといえる。

今後、AIが働き方改革を推し進める原動力になるためには、大きくふたつの課題があるかもしれない。ひとつは、中小企業でも簡単に導入できるAIサービスが登場すること。そして、もうひとつが「新たな仕事を発掘できるAI」の登場だ。

現在、労働時間の短縮など働き方改革に注力できるのは、一部の余裕のある大企業だ。しかし、真に残業などの問題が解決されるべきは、人も時間も足りていない中小企業であることは言うまでもない。

後者で言えば、効率化や自動化が進めば進むほど、人間そのものの仕事が減ってしまうという逆説的な状況にもなりかねない。企業経営側が、自動化に人件費削減というメリットを求めることは当然だからだ。日本経済、もしくは各企業の利益のパイを増やための「インサイト」を見つける用途に、AIが使われていくことが必要になってきそうだ。

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文=河鐘基

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