過去最高取引額の「独身の日セール」、成功を支えたAIの活躍

(Photo by studioEAST/Getty Images)

独身者を祝う中国の「光棍節」(11月11日)は、世界最大規模のオンラインショッピングイベントが開催される日として、日本でもすっかりお馴染みとなった。

中国物流大手アリババが仕掛けた今年のセールは、流通総額が253億ドル(2兆8700億円)と過去最高額を記録。公式発表やサウスチャイナモーニングポストなどメディア報道によると、同日の取引件数は14億8000万件(前年比40%)、1秒あたりの最高取引量は25万6000件(前年比2.1倍)に達したという。配送・発送された商品数は、なんと8億1200万件だ。

そんな膨大過ぎる取引・配送タスクを処理するために、アリババが舞台裏で積極的に採用を進めてきたテクノロジーがある。人工知能(AI)とロボットである。

まず注文段階においては、AIが顧客の相談に応えつつ商品を推薦。購入をサポートしながら並行して在庫管理を担当した。例えば、アリババの顧客相談用AIチャットボット「Alixiaomi」は、人間から投げかけられた質問の90%以上を理解し、1日あたり350万人に対応することができると言われている。

同社の在庫管理担当者によれば、「AIはすべての相談には対応できるわけではないが、問い合わせが急増した際には大活躍する。(中略)最新バージョンのAIは、顧客が相談過程に表した感情まで読むことができる」と説明されているが、今年の光棍節にはその威力を存分に発揮した。

デザインAI「Luban」も大活躍だった。Lubanは2016年の光棍節から使われ始め、1年間で商品広告用ポスター1億7000万枚を作成。クリック率を2倍に増やすことに寄与してきた。今年の独身の日セールには、1日4000万枚のポスターを生み出せるまでに性能がアップデートされたと、中国系各メディアによって報じられている。

一方、アリババの物流子会社「菜鳥網絡」が建設した深セン近郊の自動物流倉庫では、200台のロボットが24時間稼働。ロボット群が一日に処理できる注文量はおよそ100万件で、人間の手の3倍も効率がよいとの触れ込みだ。

今年の光棍節にはまた、アリババのクラウドサービス会社・アリクラウドが運営する「Apsara」にも注目が集まった。Apsaraは、アリババが独自に研究開発したスーパーコンピュータシステム。世界中に散らばった約100万台のサーバーを1台のスーパーコンピュータで連携・管理するものだが、今回の独身の日も、世界数百地域で発生した取引の演算を担当した。

なお華北3エリアにあるアリクラウドのデータセンターでは、巡回ロボット「Tianxun(天順)」が導入されている。こちらも既存の業務の30%を削減することに成功するなど、ECイベントの効率化・売上拡大に寄与している。

今後、ドローンの導入なども本格的に検討しているアリババ。独身の日の“SF化”はどこまで進むのか。世界最大のECイベントの“舞台裏”にも引き続き注目していきたい。

文=河鐘基

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