「次世代AIチップ」で動画ビジネスを変える、英Graphcoreの挑戦

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ユーチューブやフェイスブックの動画に掲載される、ターゲット広告の精度はまだ十分とは言えない。動画の内容やコンテキストを理解し、適切な広告を表示するためには膨大なプロセッシングパワーが要求され、現状のAIテクノロジーはここに追いつけていないのが現状だ。

テック企業の大手らが今、関心を注いでいるのがAIに特化したチップ開発を進める英国のスタートアップ企業「Graphcore(グラフコア)」だ。Graphcoreは11月13日、セコイヤキャピタルから5000万ドル(約57億円)を調達し次世代のAIソフトウェア開発を進めていくと宣言した。この製品はユーチューブのような動画プラットフォームにおいて、ユーザー行動をより良く理解し、ターゲット広告の精度を向上させるという。

Graphcore創業者のNigel Toonは調達資金を用い、マーケティングチームを増員すると述べた。「現在75名の従業員を、今後2年間で倍増させる」

Toonによると、同社のAI特化型チップは初期の顧客らに向け、2018年初頭に出荷されるという。Toonは同社の“IPU”プロジェクトにこれまで4年を費やしてきた(IPUはIntelligent Processing Unitを意味する)。同社のチップはクラウドにおける巨大データのプロセッシングに用いられる。

GraphcoreのAIチップがスマートフォンやスマートスピーカー製品に搭載されるまでには、まだ長い時間がかかるという。「当社がまず注力するのはクラウドの領域だ」とToonは述べた。

現在のところ、マシンラーニングに最適なチップとしてはエヌビディアのGPUが知られているが、英国のブリストル本拠のGraphcoreは、同社のチップは現状の製品の100倍に達する処理性能を持つと述べている。

この分野ではグーグルの独自のAIチップのTensor Processing Unit(TPU)も知られており、グーグルのTensorFlowフレームワークにおけるマシンラーニングソフトウェア開発に用いられている。

しかし、ToonによるとGraphcoreのIPUチップは、グーグルの製品より処理スピードが早く、柔軟性も高いという。Graphcoreは初期の顧客らの名を明らかにしていないが、その利用目的が「アップロードされた動画の情報やコンテキストを理解する」ことであると明言した。
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編集=上田裕資

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