ビジネス

2017.11.18

コーヒーの淹れ方にも「仕事ぶり」や「性格」が出る

加藤匡毅 建築家

コーヒーブランド「% ARABICA」の京都、クウェート、ドバイ店、ウーバーの日本オフィスなどを手がけた建築家・加藤匡毅氏。クリエイティビティを醸成させる大切な時間と空間について聞いた。


店舗やオフィス、ときには住宅など、建築・インテリアから音響設計に至るまでを手がける空間デザイナーをしています。最近では、京都発のコーヒーブランド「% ARABICA」、サンフランシスコ発ビーン・トゥ・バー「DANDELION CHOCOLATE」の店舗設計や、ウーバーの日本オフィスなどを担当しました。

たいがいはクライアントとブランドのコンセプトづくりから始めるので、一案件で半年〜1年程度はかかります。社には常駐のデザイナーが5人いますが、案件ごとに適した外部の建築家や専門家と組むことも。

独立前は、隈研吾建築都市設計事務所に約3年、インテリアショップのイデーに約5年いました。

隈研吾さんからは「建築という強力な、ともすれば暴力的な存在を、社会や環境とどう調和させるか」を学び、イデーの黒崎輝男さんからは「朝起きて飲む一杯の水の入ったグラスから広がっていく空間をデザインすること」を教わりました。非常に対照的ですが、いまの自分の重要な指針となっています。

海外と縁が深くなったのは、2012年にPuddleという建築事務所を設立してからです。以前からお付き合いのあったクライアントの新しいビジネスに参加することになりました。それが「% ARABICA」です。

1年かけて、京都の東山に1店舗目を、翌年、桂川を目の前にした嵐山店もオープンしたのですが、このふたつの空間と「% ARABICA」という新しいブランド、サードウェーブコーヒーというカルチャーがSNSの波に乗った。バリスタがつくるラテアートと心地よい店舗空間が世界中に伝播し、海外からビジネスの依頼が舞い込むようになったんです。

僕自身も昔からコーヒーが大好きで、イタリアの家には必ずあるといわれる「モカエキスプレス」に始まり、MoMA美術館でも展示されている美しいフォルムのコーヒードリッパー「ケメックス」にはまり、今年は新しい事務所に越したのを機に、「Slayer」のエスプレッソマシンを導入しました。

デザイナーの中には、所作の美しい人もいれば、きちんとマシンの手入れをしてくれる人もいる。逆にまったく掃除をしない人もいれば、時間短縮のためにコンビニのコーヒーで済ませる人もいる。面白いもので、彼らの仕事ぶりや性格がそのまま現れるんです。コーヒーって奥が深い(笑)。
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構成=堀香織 写真=yOU(河崎夕子)

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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