イーロン・マスクの元部下がテスラで学んだ「危機感の作り方」

ドライブモード共同創業者の上田北斗

シリコンバレーで最も注目される日本のスタートアップの一つであるドライブモード。その共同創業者である上田北斗は、世界を代表する起業家イーロン・マスクとともに働いてきた経験を持つ。

2017年10月19日、一般社団法人「at Will Work」主催、岡村製作所の後援で、上田と早稲田大学ビジネススクール准教授 入山章栄の特別対談が実現。第1回に続き、第2回で紹介するのは、あまりに壮大なビジョンを各人の行動に落とし込むイーロンの手法について。まさに革命と呼ぶべきテスラの創造は、あまりにストイックで現実的なマネジメントによって成り立っている。


人がテスラを買わない理由を、ひとつずつ潰していく

会場:イーロンは細部を大切にするそうですが、マーケティングやアカウントなどあらゆるジャンルに精通しているのですか?

上田:全部ですね。リソースマネジメントについても、社外のベンダーは嫌だといってテスラに特化したものを自社で作っていました。

入山:在庫管理やITの知識もありますか?

上田:はい、自動車業界の常識をすべて塗り替えようとしていますから。というよりも、人がテスラを買わない理由を1つ1つ潰そうとしていました。

入山:面白いですね。例えば?

上田:アメリカのディーラーは騙しにも近い手口を使う、ネゴシエーションのプロとして嫌われています。だからテスラではこれを変えるために、ディーラーを介さない直営店でショールームを開いているんです。

他にも販売システムからペーパーワークをなくすために、タブレットで2、3カ所サインするだけで契約できるようにしています。イーロンは「新車に乗ってタッチスクリーンにサインするだけで販売が終わるようにしろ」と言っていましたね。

入山:要するに顧客目線ですね。顧客のベストな体験を具現化できるよう徹底しています。

上田:そうですね。「このようにやれ」ではなく「こうなるべき」を追求していました。

入山:上田さんとしては、そういうイーロンの世界観に納得していたのですか?

上田:僕もディーラーは嫌いだったから、納得はしていましたね。ビジョンに納得してついていくから、説明が少なくても感覚で理解していました。

入山:それは重要ですね。日本では「ビジョン」という言葉が青臭いと言われがちで、これが決定的に欠けていると思うんです。欧米では大企業でもビジョンを大事にしていますよね。

「イノベーション」という言葉を聞いたことがない

入山:イーロンはビジョンを自分で伝えるタイプですか?それとも彼の考えを上田さんが察していたのでしょうか。

上田:初期は小さい会社だったので全員を招集して伝えることもありましたが、規模が大きくなってからはメディアをうまく活用していました。インタビューでの発言やツイートを通じて、社員は彼の思想に触れることができるんです。これが彼のすごい点だと思います。

他にも、ツイッターで仕事の指令を知ることもありました。例えばギガファクトリーを手がけているときに、「ギガファクトリー全体を再生可能エネルギーで稼働する工場にする」というイーロンのツイートを見て、「あ、やばい。計画練り直そう」って(笑)。
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編集=フォーブス ジャパン編集部

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