ダウンタウンにある「モスコーネ・センター」をメイン会場に、市内の主要なホテルの会議場はほぼすべてこのために借り上げられる。スピーカーの話を聞けるセッションの数は2700以上。参加者はそのほか、レニー・クラヴィッツやアリシア・キーズが出演するコンサートにも無料で行くことができる。ロッククライミングやマインドフルネスのコーナーもあり、どこへ行っても人、人、人……。
(c)2017 by Jakub Mosur Photography
着席の会議に参加しているというのに、私は毎日一万歩以上、距離にして約9kmを歩いていた。なにせ会場から会場まで、長くて20分ほど歩く。そしてその道中は、参加証を首から下げた人であふれかえっている。街をあげてのお祭りである。
スピーカー陣も豪華だ。ミシェル・オバマ前大統領夫人を筆頭に、ブッシュ元大統領の双子の姉妹、アシュトン・カッチャー、ナタリー・ポートマン、アディダスやユーチューブのCEOなど綺羅星のごとくである。議題は、セールスフォースの製品に寄った内容もあるが、マーケティングの未来や、平等の実現への挑戦などテーマの幅広かった。ことに今回は女性の権利に関するセッションも多かったと思う。
そんな会議の中でひときわ人気のあったセッションが、IBMのジニ・ロメッティCEOとセールスフォースのマーク・ベニオフ会長兼CEOによる1時間にわたる対談だった。ロメッティはIBMの外で講演をすることがほどんとない。ベニオフは36年間のIBM生活の結果CEOに上り詰めた彼女に、現在進行中の第四次産業革命に対する考え、女性のキャリア形成の秘訣を聞いた。
(c)2017 by Jakub Mosur Photography
必要なのはアジャイルな精神
ロメッティは、データやAIが業務に大きな力を持ってきた今、特にAIは、必ず良い方向に使われなくてはいけないと強調し、そのための2つのポイントを挙げた。ひとつは、データを取る際に何のためのデータであるか目的をはっきりさせること。もう一つはデータの透明性だ。単にデータそのものを開示するだけではなく、AIを使う場合は、誰がそのようにそのように学習させたかまで開示するべきだという考えだ。