テクノロジー

2017.11.10 20:00

サイバーダイン山海が落合陽一に直伝 大学発ベンチャーで社会を動かす「秘訣」

落合陽一 ピクシーダストテクノロジーズCEO(左)と山海嘉之 CYBERDYNE株式会社CEO

落合陽一 ピクシーダストテクノロジーズCEO(左)と山海嘉之 CYBERDYNE株式会社CEO

あの“現代の魔法使い”が、大型の資金調達を実施──大学の研究成果をベースとした「大学発ベンチャー」の活躍が待望される中、筑波大学助教・学長補佐の落合陽一がCEOを務めるピクシーダストテクノロジーズが、総額6.45億円の資金調達を行ったことを発表した。
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同資金調達は、インキュベイトファンド(東京都港区、代表パートナー:村田祐介)、凸版印刷(東京都千代田区、代表取締役社長:金子眞吾)、ハーティス(東京都品川区、代表:孫泰蔵)、ワタナベエンターテインメント(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長:渡辺ミキ)を引受先とした第三者割当増資と、NEDOが実施する平成29年度「研究開発型ベンチャー支援事業/シード期の研究開発型ベンチャー(STS)に対する事業化支援」に採択された結果、実現。

超音波振動子を制御し空中にスポット音響をつくる「Holographic Whisper」をはじめ、ライトフィールド/ホログラムなどの光技術、VR/ARゴーグルのための光学技術、デジタルファブリケーション技術、三次元認識のためのディープラーニング手法など、落合陽一がこれまで手がけてきた三次元の空間オーディオビジュアル技術研究が、社会実装に向けて、大きく前進した形になる。

そんな落合がこのタイミングで話をしたいと、対談を熱望したのが、筑波大学大学院教授にして、「ロボットスーツHAL」を医療・介護福祉・生活分野等の多領域に展開する筑波大学発ベンチャー・CYBERDYNE CEOの山海嘉之。2人には、「新しい産学連携」をテーマに語り合ってもらった。
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落合「筑波大学には、山海先生というブルドーザーが通った跡がある」

落合陽一(以下、落合):僕がCEOをやっているピクシーダストテクノロジーズが、6.45億円の資金調達を実施しました。資金を得て、自分がラボで研究してきたことを、本格的に社会へ実装していけるフェーズに入れた今、対談するなら誰がいいだろうか。

そう考えた時に真っ先に浮かんだのが、山海先生でした。実は、僕は筑波大学での学部時代に先生の授業を受けていたので、対談をお受けいただいて大変光栄です。

山海嘉之(以下、山海):それは、嬉しいですね。普段から活躍する姿は見ているものの、改めてじっくり話す機会もないので、今日の対談をとても楽しみにしていました。

落合:山海先生を対談相手に選んだ理由は、2つあります。

まず、先輩教員として、「大学をハックし続けた人」だからです。筑波大学で学長補佐や自分の部局の助教として、色々と大学内の業務や運営をやっていて気づくのは、筑波大学の内規に、「明らかにこの条項は、山海ルールだな」というものがある(笑)。

山海先生という「ブルドーザー」が通って、大学内の壁を壊した痕跡ですね。そのおかげで、僕もチャレンジがしやすくなっています。

山海:上場企業の社長をやりながら、大学教授をしているのなんて、珍しいでしょうね(笑)。上場の時も、それなりに手間はかかりました。でも、結果的には東証にも上場できた。

なぜかといえば、自分がやろうとしている手続きはどういうもので、何をやるかを、丁寧に一つ一つ大学や関係機関に説明したからなんです。そうしたプロセスで、交渉した結果できたのが、落合さんの言う「山海ルール」でしょうかね。

落合:山海先生のやってきたことを見ると、「大学だって、十分ハックできる」と思えるんですよね。僕も「で、意思決定者は誰ですか?」と、すぐに聞いてしまう。もし「文科省です」という答えなら、官僚の方に電話を一本入れる(笑)、それで説明しにいく。すると、案外前に進むんですよね。

山海:実は社会には調整能力があって、プロセスを整理したり、ステイクホルダーを見極めて説明をすれば、本質を理解してくれる意思決定者もいるので案外動くものです。
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文=高野明男 写真=藤井さおり

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