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山海「地球規模で、異次元立体詰将棋をしているんです」

落合:山海先生から見て、大学教員でありながら、テクノロジー・スタートアップをやる一番の魅力はどこにありますか。

山海:「社会全体が見えてくることにある」と思っています。この立場で、産学連携を進めると、ある時は公認会計士と膝を突き合わせ対話をし、ある時は大企業の事業部との契約に注力するといった様々な経験をせざるを得ないので、研究以外の分野の知識がどんどん蓄積されていきます。

落合:確かに、会社を始めると、必要に迫られて、BS(貸借対照表)やPL、契約書が途端に読めるようになりました(笑)。昔はわからなかったですが、会社にいるとレビューしろって連絡が来ますからね。大体はCOOの村上に読んでもらってますけど。

山海: それを何度か繰り返すと、大学人だけの世界とは違う、小学校の先生が言っていたような「社会はみんなで動かしているんですよ」という世界が、そのまま見えるようになります。大学だけにいると、どんどんタコツボ的人間になってしまう。それに、狭い分野でやろうとすると、社会の複合的な課題を解くことができない。


山海嘉之 CYBERDYNE株式会社CEO

落合:CYBERDYNEのロボットスーツHALをサービス付き高齢者向け住宅に導入する事業なんて、複合的な課題の解決そのものですよ。これは、「高齢化問題」を、テクニカルな成長課題に差し替えているところが見事なんです。

ちょうど、そのような高齢化などにまつわる「身体ダイバーシティ」について解決するAI領域のJST CRESTにも、研究代表で採択されています。これは筑波大と弊社、大阪大学と富士通とSonyCSLの連携プロジェクトなんですが、いい感じにシナジーや共同研究などの将来へのアクションプランができています。

山海:落合さんは、今エコシステムを自ら構築し、動かし始めているところだと思います。面白いのは、これから。今回のシリーズAの調達を経て、サイクルを数回回せば、だいたい“見えてくる”はずです。僕には「地球が手のひらの中にある」ように思えています(笑)。

落合:あ、それは感覚としてわかってきた気がします。 

山海:流石!僕はよく「異次元立体詰将棋」と言っているのですが、地球全体が見えるので、パチン、パチンと次の手をあらゆる場所に打っていくような感覚で、未来開拓に挑戦できるんです。

落合:全体が見えていれば、後はそこにたどり着くまでのプロセスはただの「手段」。研究開発なら、資金さえあればできるっていうことですよね。

山海:おっしゃる通りです。多くの人は未来像という言葉から、「ぼんやりとしたモノ」を想像しますが、僕は、未来像とは緻密な「設計図」だと思っています。中途半端な想定だと、未来像はただ描いただけで終わってしまい、結局現場しか見えません。

緻密な未来の設計図から現在にバックキャストしていく手法で、未来を創っていく。まずは自分が生み出したものを、エコシステム内の循環の中に、パっと切り出して乗せてみてください。それがうまく機能すれば、未来社会を創り出していくことが、かなりリアリティを帯びてくると思います。

ある日、落合さんが「地球が手のひらの中にある」と思えるようになって、そんな調子でどんどん社会を変えていくチェンジメーカーになっていくことを、期待しています。


山海嘉之◎筑波大学大学院システム情報工学研究科教授、サイバニクス研究センター研究統括、CYBERDYNE株式会社CEO、内閣府ImPACT プログラムマネージャー等を務める。

落合陽一◎筑波大学図書館情報メディア系助教(デジタルネイチャー研究室主宰)。筑波大学学長補佐。ピクシーダストテクノロジーズ株式会社CEO。大阪芸術大学客員教授、デジタルハリウッド大学客員教授等を務める。

文=高野明男 写真=藤井さおり

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