キャリア・教育

2017.11.13 07:30

将来の競争力は「丁寧な取り組み」から生まれる


─グループ内の意思統一を、どのように図ったのか。

就任当初からグループの方向性を1つにしたいと感じていたが、すぐには難しい。最初に「好きなことをやって、いい明日をつくろう」というスローガンをつくった。「細かいことは言わないが、せめて同じ方向を見よう」という意味を込めた。グループ歌(社歌)も一体感醸成に役立てている。

また、経営の方向性を合わせるため、グループ主要14社の役員SNSをつくり、日常的に情報共有できるようにした。14社の社長とは、懇談会や経営会議などを通じてほぼ毎週顔を合わせ、意思疎通を図っている。グループの一体化のため、管理を強めるのではなく、「同じ土俵でやっていこう」という姿勢で取り組んでいる。

もともとトヨタ時代から、従業員とのコミュニケーションを最も重視してきた。トヨタ輸送の社長時は、1100人の従業員全員と面談し、現場の課題とその対応策を聞き、解決していった。取り組みを丁寧にやると、風通しもよくなる。こうした取り組みこそ「現地現物」だと思う。

─足下の業績は好調だ。

好調だが、危機感がある。今後EV(電気自動車)化が進みエンジンや変速機が不要になれば、現在の連結売上高3.5兆円のうち2兆円近くを失う。私が社長の間にやらなければいけないのは、将来のための「次の手」。足下の業績に満足している社長ではよくない。私の最大のミッションは「将来の競争力をつける」ことだ。


いはら・やすもり◎1951年生まれ。75年京都大学法学部卒業、トヨタ自動車販売(現・トヨタ自動車)入社。2009年トヨタ自動車専務。11年取締役兼専務役員。13年副社長。15年4月取締役。15年6月より現職。

text by Tadahide Masuda photograph by Hironobu Sato

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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