同社は200社を超えるグループ会社を持ち、自動車を構成する部品のほとんどをカバーするほか、住生活やエネルギー関連の商品まで幅広い事業領域を持つ。これまでは、各グループ会社の独自判断によるスピーディーな事業推進を強みとしてきた。
しかし、激変する環境の中で、将来にわたり競争力を維持していくためには、グループの結束力の強化が求められる。そのための改革とは。
─社長就任から今まで、どのように改革を進めてきたのか。
当初から、アイシングループとしての総合力を高め、次世代技術への対応や、自動車業界の外からのプレイヤー参入に対抗できる新たなビジネスモデルの創出など、将来に向けた種まきの必要性を感じていた。ただ、私はトヨタ出身でアイシンの幅広い事業領域に精通しているわけではない。そのため、社長就任の2カ月前から主要拠点を視察した。すると、さまざまな問題が見えてきた。
そこで、1年目は各現場から課題を出してもらい、350個挙がったうちの50〜60個を重点課題として、解決に取り組むとともに、以前から進めてきた事業再編をやり遂げることで、足下を固めることに注力した。
その上で、2年目から次世代技術の開発に着手した。これまでもそれぞれの会社で取り組まれてはいたが、本格的な動きになっていなかったため、垣根を取り払い、各社の幹部を集めて次世代の開発テーマを検討させた。その結果、「ゼロエミッション」「自動運転」「コネクティッド」の3領域で6つのプロジェクトが立ち上がり、検討が進んでいる。
改革を進める中で、大事にしているのは、アイシンのDNAだ。プロ集団が集い、スピーディーに意思決定をし、挑戦していく。そして分社化する。自動車部品に加え、ベッドやトイレ、レーザーなどの先端技術まで展開する部品メーカーは他にない。大好きなDNAだ。
─2017年4月には、パワートレイン、走行安全、車体、情報・電子の4つの事業軸で、グループ会社の枠を超えて連携する「バーチャルカンパニー(VC)体制」がスタートした。
例えば変速機の場合、これまで種類別に3つの会社で別々に扱ってきたが、一緒にやった方が効率がいいし、競争力も高まる。とはいえ、グループ会社を現実に統合すると、アイシンのよいDNAが失われる恐れがあり、統合のためのコストもかかる。そこでVCを選んだ。注意したのは、リアルな会社とVCでやることのすみ分けだ。VCでやることを、方向合わせ、効率化、高度化、新たな価値創造の4つに明確化することで、うまく進んでいる。