「AIスピーカー」戦国時代、セキュリティーが重要課題に

George W. Bailey / shutterstock.com


コンピューターに話しかけるだけで、お手軽に家事を手伝ってくれる──。AIスピーカーが掲げるSFチックな未来像は、ユーザーや消費者の興味を一身に惹きはじめている。ただ一方で、AIスピーカーを生活に取り入れていくにあたっての「リスク」についても、にわかに議論が騒がしくなってきた。

まず、AIスピーカーが抱えるリスクのひとつに、「プライバシー侵害」がある。警察関係者のひとりは、そのリスクの可能性について以下のように指摘する。

「マイクとスピーカーが内蔵され、それがインターネットが繋がっているとことは、すなわち世界中どこからでも家庭内の会話を聞くことができるのです。カメラが搭載されれば、覗き見も可能です。理論的には例えばアフリカから東京にある住居の内部を盗撮したり、盗聴することもできる。クラッカー(悪意のあるハッカー)が、AIスピーカーをハッキングすることも、可能性としては今後、充分あり得る話ではないか」

AIスピーカーが抱えるもうひとつのリスクとしては、家電などのコントロールを奪われるという事態も想定される。前出の専門家は「プライバシー侵害より危険」と前置きした上で、セキュリティー対策を真剣に考えていかねならないと警鐘を鳴らす。

「ハッキングによってAIスピーカーにクラッカーが侵入し、コントロールが奪われれば、IoT家電の“乗っ取り”が可能になるということ。つまり、個人情報が盗まれることより、もっと深刻な物理的被害を被るケースが生まれてくるでしょう。例えば、住宅にAIスピーカーと連動したスマートキーが設置されていれば、偽の指示を送り開錠することもできる。オーブンレンジの温度を勝手に高温にして、火事を引き起こさせることもできる」

「それ以外にも、物理的被害のバリエーションは数多く想定できますし、ランサムウェア被害も出てくるかもしれません。実際、IoT機器にまつわる類似被害事例は、すでに世界各地から報告され始めています。AIスピーカーに限りませんが、IoT機器全般が普及するなかセキュリティー対策に注意を向けていく必要があるでしょう」

2017年夏、中国製の家庭用見守りカメラがハッキングされ、持ち主が操作していないのに勝手にカメラが動き、映像がどこかへ送信されていたという騒動が一部で話題になった。類似の事例がAIスピーカーでも起こるかもしれないのだ。

IoT機器が増えるにつれ、セキュリティー需要も確実に増えていく。被害者にならないようにリテラシーを高めつつも、それら課題をいかにビジネスにつなげるかという視点も同時に持ち合わせていきたいところだ。

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文=河鐘基

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