ビジネス

2017.11.08

Zendeskは日本でも「コールセンター革命」を起こせるか?

ミッケル・スヴェーン Zendesk共同創業者兼CEO

サポートデスク業務は、問い合わせ対応で十分──。コストセンター扱いしている企業は少なくない。しかし、デンマーク発のIT企業が、カスタマーサービスを“攻めの経営”の起点に変えようとしている。


「世界を変える」と鼻息が荒い起業家が多い今日では、“サポートデスク改革”は地味な部類に入るかもしれない。

仮にそう思われても、デンマーク発のカスタマーサポートツール開発企業「Zendesk(ゼンデスク)」共同創業者兼CEOのミッケル・スヴェーン(46)はきっと怒りはしないだろう。なにせ、後に共同創業者になる2人の友人に「カスタマーサポート業務をデジタル化する会社を立ち上げよう」と提案した際も、「今までに聞いたアイデアの中でいちばん退屈そうだ」と言われた過去を持つのだから。

しかし、その“退屈”なアイデアが次代の世界的企業に化けつつある。2007年創業のZendeskは電話やメール、ウェブフォーム、FAQサイト作成、ツイッターやフェイスブック、ユーチューブなどのソーシャルメディア、オンラインチャットの対応窓口を一元管理・分析できるクラウド型ヘルプデスクソフトウェアを開発。

今では、160以上の国と地域で展開し、ゼロックスやボーダフォンといった大企業からボックス、スラックといった注目のスタートアップまで約10万7400の顧客を抱えるほどに成長した。日本でもリクルートやランサーズ、freeeなど、1200社がZendeskのサービスを導入している(17年6月時点)。

17年第2四半期の売上高は前年同期比で36%増の1億130万ドル。17年度は4億2000万ドル以上の売上高を見込んでいる。製品への評価も高く、米調査会社ガートナーも今年の「CRM顧客エンゲージメントセンター」マジッククアドラントで、マイクロソフトやオラクルと並ぶ業界リーダーに位置付けている。

スヴェーンは「カスタマーサービスの課題は解決済みで、イノベーションの余地がないと思われていた」と創業当時を振り返る。実際、ベンチャー投資家に投資を頼んでもアイデアが理解されなかったという。

だが、ときはSNS黎明期。消費者の声は大きくなり、ソーシャルメディアやモバイル端末が普及すると、コストセンター扱いされていたサポートデスク業務は消費者とブランドをつなぐ窓口としての役割を担うようになった。Zendeskはその潮流をいち早く予見し、波に乗ることができたのだ。

コストセンターから“宝の山”へ

クレーム処理は対応を誤れば炎上に、誠実に応えればブランドの向上につながる。消費者の声がすぐに広がる今だからこそ、コールセンター業務の意義は高まっている。カギは顧客との関係づくり、つまり「カスタマーエンゲージメント」である。

「顧客がどんなサポートを受けたいか。よく聞かれる質問は何か。こうしたデータを使えば業務を効率化できます。より良い顧客サービスを追求するだけで、違いが生まれるのです」とスヴェーンは語る。

クラウド上で蓄積される膨大な顧客サービスに関するデータも企業の製品やサービスを企画・開発する、あるいは改善する上でヒントになる。まさに“宝の山”だ。
次ページ > 日本の企業こそ、相性がいい

文=フォーブス ジャパン編集部 写真=ラミン・ラヒミアン

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事