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2017.11.13

日本の優れた医療研究が「製品化・事業化につながらない」理由

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2014年11月、再生医療等製品の条件及び期限付承認が施行され、2015年9月には改正法の下で最初の再生治療製品が複数承認された。簡単に言うと、製品を市場に出すまでの期間を劇的に短縮したのだ。

学術誌「ネイチャー」などで本規制改革への疑問が呈されるなど、世界をあっと驚かせ、議論が巻き起こった。これが多くの再生医療企業にシグナルを送り、実際に米国から東京に本社を移転したベンチャー企業もある。再生医療に続き、今年7月には革新的医療機器の、10月には医薬品についても、条件付早期承認制度が施行された。

エコシステム醸成で垣根を超えた発展を

前述の「死の谷」問題に話を戻そう。ベンチャー企業を含むエコシステムが鍵であるが、日本ではこれまで本格的なベンチャー振興策は不在だった。

現在は、厚労大臣懇談会による報告書にもとづき、「医療系ベンチャー振興推進会議」がPDCAサイクルの後押しと助言を行っている。この4月には厚労省はじめ関連機関にベンチャー振興の担当者が任命され、10月には厚労省主催でベンチャーサミットが開催されるなど、提言の実行に移っている。

これは、まさに垣根を超えるイニシアティブだ。医療系分野でエコシステムが発展すれば、ベンチャー振興だけでなく、大学などの研究機関の成果が世に出る率が上がり、大企業がそうした研究から製品化することが増えるという好循環がつくられる。しかも日本に閉じたものではなく、オープンなエコシステムとして国際的な発展を志向している。

世の中には、こうしたお役所のベンチャー振興の動きについて、冷ややかな声もある。だが何もしなければ、将来は暗いだけだ。反対意見がある中でも挑戦するのが起業家精神であり、「規制から育成へ」と唱えて前に進もうとする意義は大きい。

また、新たな人材にも希望がみられる。ベンチャーサミットの「若手ベンチャー・セッション」には、医師でありながら海外MBAを取得した人、ベンチャー2社目を立ち上げた人など、かつて見られなかったタイプの優れた若手起業家が集まった。


石倉 大樹/日本医療機器開発機構 取締役 CBO、倉森 和幸/ガイアバイオメディシン 代表取締役社長、原 聖吾/情報医療 代表取締役、鍵本 忠尚/ヘリオス 代表取締役社長 兼 CEO

日本での医療系ベンチャー振興は始まったばかりで道のりは遠い。その成否は、垣根を超えて人・組織がつながるエコシステム醸成にかかっている。

文=本荘修二

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