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2017.11.06

ネットフリックス快進撃を支える「イッキ見」の力 米調査結果

Daniel Krason / Shutterstock.com

1クール分の連続ドラマを一気見する「ビンジ・ウォッチ」から、一刻も早い完走を競う「ビンジ・レース」へ──。映像配信サービスのネットフリックスが10月中旬、同社会員のうち840万人がビンジ・レースに参戦したと発表した。(編集部注:ビンジ“binge”とは元々、大酒を飲むことを意味する言葉だが、近年はドラマ等の一気見を“binge watch”と呼んでいる)

ビンジ・レースとは配信開始から24時間以内に連続ドラマの1クール全話を見終えることを指す。ネットフリックスによると、このスタイルで視聴する会員が増えており、米国でオリジナルドラマの全話一挙配信を始めた2013年は約20万人だったビンジ・レーサー人口が、2017年9月には500万人以上に急増。20倍以上の伸びを見せているという。

今や米国内の契約数がケーブルテレビを上回るネットフリックスによってビンジ・ウォッチの習慣が広く普及する前、ドラマの一気見をする層は一部の熱心なドラマファンに限られていた。彼らは感想を記録するため、内容を分析するため、あるいはもう一度通して見るためにDVDに収録された複数のエピソードをまとめて視聴していた。しかし2013年以降、全話を一気に消費する文化が一般視聴者の間でも新常識になりつつある。

週に一度のテレビ放送とは異なり、一挙配信されるドラマは、視聴者が自分の都合に合わせて見ることが可能だ。次のエピソードを1週間待つ必要はなく、CMもない。テレビ局による制約や規制もない。放送業界のルールやスケジュールに左右されないこの新しい視聴スタイルは、人々の生活におけるドラマの在り方にも変化をもたらした。ドラマの話が職場などでの雑談のネタであることはこれまでと変わらないが、何週にもわたって続く話題ではない。週末明けに新作映画について話すように、人々はドラマの話をするようになった。さらに、ネタバレに触れてしまうリスクを避けるため、会話に参加するために、人々はこぞって視聴ペースを上げ始めたのだ。(同時に、評論家も全話を見てからレビューを発表するようになった)

ネットフリックスのオリジナルシリーズ部門副代表を務めるブライアン・ライトは、ビンジ・レースの醍醐味について「小説の最後のページであれ、お気に入りドラマの感動的なクライマックスであれ、人よりも先に物語を見届けた時は独特の満足感がある」と語る。早く結末を見たいというこの考え方も、終了時期が未決定のまま制作されてきた従来の連続ドラマの在り方を覆すものだ。
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編集=海田恭子

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