ビジネス

2017.11.12

人口が増え続ける「小さな町」の熱い仕掛け

鯖江のめがねの看板


鯖江市は人口7万人弱ですが、市制施行以来60年、人口が増え続けています。また、たくさんの企業さんが鯖江に来て下さって一緒に様々な取り組みを行ってきました。しかし、ここ数年企業誘致を行ってきたもののなかなか実績に結び付かなかったのも事実です。それがやっと実を結んできました。

今年7月と8月に鯖江市は、「お試しサテライトオフィス」モデル事業(総務省)の採択を受け、
・「空き家、空き室」問題への対応
・進出企業と市内企業との新たなビジネスマッチングの創出
・進出企業による雇用促進・人材確保
をテーマに、「空き家」を活用したサテライトオフィス誘致に向けた具体的なスキームの検証を行いました(市の単独事業として来年3月まで延長実施中)。

行政頼りでなく、行政と共に

結果、空き家4棟に2ヶ月で33社の企業の方々が鯖江でお仕事体験をされました。LIFULL、あしたのチームもお試しサテライトオフィスで鯖江に来られたことがきっかけで、冒頭で紹介したように今回のサテライトオフィス開設に繫がったのです。日本最大級の不動産・住宅情報サイト「LIFULL HOME’S」を運営するLIFULLは、鯖江で若者・子育て女性の雇用創出とキャリア支援に取り組んでいくそうです。

実はLIFULLは、2008年に開催した鯖江市地域活性化プランコンテストに協賛してくださっていました。第1回プランコンテスト開催後、LIFULLが当時入っていた晴海トリトンのオフィスで、井上社長も一緒にプランコンテスト参加者と地域活性をテーマにワークショップをさせていただきました。

あれから10年、先日、私は井上社長と10年ぶりに鯖江で再会しました。2008年に私たちのプランコンテストに参加してもらい、今度は鯖江にサテライトオフィスの開設。10年越しの巡り合わせに感慨深く感動しました。そして、どうしてもお伝えしたいことがあり話しかけました。

「覚えていらっしゃらないと思いますが、私、お会いしているんです。10年前、鯖江市地域活性化プランコンテストに協賛いただきありがとうございました。おかげ様で10年続けることができました。第1回があったから今の私があります」

井上社長は、鯖江に来られる前に調べていたらしく、「写真あった! 見たよ。うちでワークショップしたよね。よく10年も続けてきたね、凄いね」と笑顔でおっしゃってくださいました。

当時は、前に出るタイプではなく裏方でいたため、井上社長とは挨拶しただけで、「大きな会社の社長さんだ!」と遠目で見ながらとても緊張していたのを覚えています。そして、「10年続けた」私よりも、企業として10年にもわたって地域の取り組みに関わってこられたことに私は社長の意志の強さを感じたのです。


「鯖江市地域活性化プランコンテスト」参加者の集合写真

「鯖江市を活性化させるためのプランコンテストに、よく大手企業がスポンサーになってくれたね」と言われますが、私もそう思います。行政「頼り」ではなく、行政、地域の方々と「共に」全国を意識しおもてなしを行ってきたことが、企業を巻き込むことができるコンテンツを創れたのだと思います。

そして、前例がない新しいことも積極的に受け入れ、企業と共にチャレンジしてきたことで、鯖江であれば何かできるのではないか、何か一緒に創れるのではないか、というイメージができ今回のサテライトオフィス開設につながったと思います。

地域の人とで創る協創から、企業×地域モデルの創出へ。やっと第一歩。

文=竹部美樹

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