放送作家、脚本家という肩書にとどまらず、京都の『下鴨茶寮』の経営や、京都造形大学副学長としてアカデミックな分野にも関わる小山薫堂氏。
2007年には交通事故削減のキャンペーンである”TOKYO SMART DRIVER”の発起人を務め、このプロジェクトは2017年7月からは”JAPAN SMART DRIVER”として市民主体の交通安全と交通価値プラットホームを目指すものへと進化した。「安全に、ゆっくり走る。それを“速い車”で実行する気持ちの余裕というものがいい」と語る通り、自らの運転は他のクルマへの思いやりとスマートさを大切にしている。
そんな小山氏だが、Audi R8 Coupéを試乗し、クルマから降りた時の表情は明るく輝き、その走行性能の高さに魅了されたことは明らかだった。
「レースカーのコクピットに座ったような高揚感がある。スイッチ類のデザインやそれぞれのパーツに触れた時の手触りなど、感覚に訴える部分にも洗練を感じる」と話した。「V10の5.2リッターエンジンを積み、610馬力ですか。そんなパワーを発するスーパーカーでありながら、非常に乗りやすいクルマですね。走り始めてすぐ、自分の手足のように思いのままに加速し、曲がり、そして止まることに驚かされました。また、機敏に走ることができる一方で、ゆったりと走らせれば高級クーペとして快適でスムーズなドライビングもできる。街を走るのにはとても良いクルマですね」
自らを「アイデアのお医者さん、みたいなところがありますね」と語る彼の元には様々なプロジェクトのオファーや企画の申し込みが集まるが、「それほど忙しい、というわけでもないんですよ」とサラリと話す。その鍵は小山薫堂氏の仕事におけるスピード感にある。
「自分がこれは面白い、と思う仕事だけを引き受けるようにしているんです。そういう仕事に真剣に向き合うと、自然とスピードはあがる。特に僕はせっかちなので、プロジェクトを進めるときに次のアクションまでの動きが遅いと、相手の情熱がないのかな、と感じてしまうんです。丁々発止、というくらいの激しさと速度で物事が進む流れのほうがアイデアはどんどん出てきますし、面白いですね。タイムロスというストレスがない状態こそ、快適に仕事を進められているともいえます。Audi R8を走らせていてもそんな快適さを感じました。アクセルを踏んだとき、ステアリングを切ったとき、自分の身体の一部になったように瞬間的にクルマが反応する。とても楽しいドライブができました」
100km/hまでわずか3.2秒で到達する瞬発力やサーキットで磨き上げられたドライビング性能をいかんなく発揮するAudi R8は、いくつものプロジェクトを並行しながら駆けてゆく小山氏のお眼鏡に叶うパフォーマンスを発揮した。
そしてまた、小山氏はこのマットなカモフラージュグリーンのボディーカラーにも目を見張った。
パワーとエレガンスの融合をテーマにデザインされたエクステリア。キメ細やかな質感が街に馴染む上質感を醸し出す。「個性的な色で、押し出しは強いのに上品という印象を受けました。絶妙なカラーリングとペイントの質感によってシックに見えるあたりがAudiらしく洗練されていますね。特にこのマットの質感が都会的な雰囲気を醸し出しています。マットなトーンのクルマは最近よく見かけますが、それとは一線を画す上品さがあります。少しだけ光沢を出したり、なによりキメの細かさが違いますね。良い織物に触れたときの気持ちよさに通じるものがあると思いました。Audiはドイツのメーカーですが、このトーンは日本の文化が好きな人がデザインしたのでは、と感じるほど、日本人好みの美しさがあります」
そしてもうひとつ、「日本の美意識に通じるように思う」と小山氏が語ったポイントは、ダイヤモンドステッチが施された室内の天井部分。
このクルマのためだけに特別にしつらえた天井に。オーナーのみが堪能することのできる贅沢な体験。「高い技術を持つ職人さんが手仕事でステッチを天井にあしらっているところもいいですね。派手に人目につくところではなく、使う人の心地よさに直結する部分に手間をかける。このクルマを所有し、シートに座った人だけがわかり、この美しいあしらいを一番身近で感じられる。その豊かさや歓びを追求するところにも、上質な日本建築が天井に手間をかけるという日本の伝統的な文化にも通じるものを感じました」
そんな極上のインテリアと洗練されたルックスを兼ね備えるAudi R8。このクルマを所有することで得られる豊かさとは?
「富裕層の間で高級車を所有することが再びブームとなっています。高級車ブームといえばバブルの頃にもありましたが、昔と今ではマインドが異なると思います。昔は人にみせびらかすために高級車に乗ったものですが、今は自分が心地よくなることを求めてそれを選んでいる人が多くなったと思っています。言いかえると、昔はモテるために乗っていたところがありましたが、今は逆に派手すぎるとモテないですよね(笑)。女の子に乗るのが恥ずかしいと言われてしまったり。そうではなくて、Audi R8に乗って一人でドライブするのはとても良い体験だと思うんです。V10のエンジン音もいいですし、このクルマはBang & Olufsenのオーディオシステムを搭載しているので、好きな音楽を聞きながらドライブするのもいい。花に水をやるように、自分の感性を潤わせる。このクルマでは、そういうことができるんじゃないかなと思います」
Audi R8を走らせる小山薫堂氏の顔に浮かぶ微笑みが、そんな豊かな体験を雄弁に物語っている。
Audi R8 Coupé V10 plus 5.2 FSI quattro
(カモフラージュグリーンマットエフェクト)Audiのフラッグシップモデル、Audi R8の最上位モデル。低負荷時にはエンジン制御により片側バンクを休止させ、高出力と高効率を実現。街なかやクルージング時の滑らかで静かな走りを楽しむことができる。数々の過酷なレースにより磨き上げられた技術は優れた視界、限界領域での安定した挙動、そして快適な乗り心地を実現させた。最高出力(ネット)449kw(610PS)/8250rpm、最大トルク(ネット)560Nm(57.1kgm)/6500rpm。全幅1940mm×全高1240mm×全長4425mm。車両本体価格2906万円~(消費税込み)。
▷お問い合わせ アウディ コミュニケーションセンター Tel:0120-598106
http://www.audi.jp/audisport/
小山薫堂(こやま・くんどう)◎1964年、熊本県生まれ。京都造形大学副学長。放送作家・脚本家として『世界遺産』『料理の鉄人』『おくりびと』などを手がける。エッセイ、作詞などの執筆活動のほか、熊本県や京都市など地方創生の企画にも携わっている。