二兎を追って二兎を得る、シンガポール的ライフマネジメント術

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日本でも家事支援・代行サービスが少しずつ広がりつつあると聞きますが、野村総合研究所が平成26年に実施した調査によると、家事代行サービスを使っているもしくは使ったことがあると回答したのは全体のわずか3%。その背景には、コストの問題以外に、日本では家事や掃除といった家庭内での仕事は「自分たちでやるべきこと」と捉える傾向が根強く、こうしたサービスを利用することに精神的な抵抗を感じるということもあるように思います。

一方、同調査によると利用者のうち約90%がそのサービスに満足、また約93%がまたサービスを利用したいと考えている、という結果でした。利用したメリットとしては「自分の時間や仕事の時間が取れる」「肉体的・心理的負担が軽減する」に加えて「生活全般に対する満足度が高まった」といった声が挙げられています。

日々当たり前のようにしている家事。まずはこれを改めて「仕事」と定義して、現在自分やパートナーが家庭でしている「仕事」について洗い出してみる。そして、その中で必ずしも自分たちがやらなくても良いことを切り出し、アウトソースすることを検討してみる。結果的にこれが、仕事にも家庭にもよい循環をうむ大きなきっかけになる可能性があります。

家族との時間は『量』ではなく『質』を大切に

フェニーさんの一日は朝8時のエクササイズから始まります。終わり次第オフィスに向かい、仕事が終わるのは毎日夕方6時か7時ぐらい。家族と過ごす時間を持てるのはその後で、決して長い時間ではありません。

働く女性の中には、自分が仕事をしていることで子どもと過ごす時間が少ないことに罪悪感を感じる人も少なくありません。ところがワシントンポストに2015年に掲載されたトロント大学の研究では『両親が子どもと過ごす時間の長さと子どもの心身の成長は無関係』ということが明らかになっています。

その研究によれば、子どもの心身の健やかな成長に必要なのは、親と一緒に過ごす時間の長さよりも、本の読み聞かせをしたり、一緒にご飯を食べたり、おしゃべりをしたりと、きちんと向き合うことなのです。

フェニーさんの家族との過ごし方はまさに、量よりも質を大切にするスタイル。仕事から帰宅してからは、夜一緒に寝るまでの時間は、できる限り子どもたちと過ごしています。

「家族で夕食をとり、『今日1日の中で感謝したいこと』と『明日楽しみにしていること』をシェアしています。そうすることで、子どもたちに感謝をする心が芽生え、明日を楽しみにする気持ちが育つと考えています」

夫婦の良い関係を保つ秘訣については、「二人だけで過ごす時間を定期的につくること」だと言うフェニーさん。1ヶ月に1度は二人きりで出かける、また数年に1度は2週間ほどまとまった休みをとり、子どもを預けて二人だけの旅行にも行くこともあります。

こうした話はフェニーさんに限らず、シンガポールで出会った子どものいるカップルからはよく聞く話です。忙しい中でも、子どもと、そしてパートナーと、長い時間ではなくても濃く向き合う時間を作ること。これが家庭円満の秘訣のようです。

シンガポールで生きる女性に学ぶ二兎を追って二兎を得る人生を実現する考え方、あなたの人生にも取り入れてみませんか。

文=小川麻奈

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