テスラの企業理念を色濃く投影するSUV「モデルX」

TESLA Model X photograph by Tsukuru Asada (secession)

テスラ・シンドローム──もはや、そう呼びたくなるほど、世界中の自動車メーカーがEV開発に名乗りをあげている。

昨年のパリ・サロンでは、メルセデス・ベンツがEVのブランドである「EQ」を立ち上げると宣言し、フォルクスワーゲンは2025年まで300万台のEVを販売するという野心的な目標を発表した。さらに、ジャガー「I-PACE」、アストンマーティン「DBE」、ベントレー「EX12スピード6eコンセプト」と、続々と高級EVのコンセプトの発表が続いた。

そのどれもが、スポーティな外観とルーミーな室内空間を持ち、一回の充電で走れる距離が約500kmと、テスラ「モデルX」を仮想的に開発されたのは火を見るより明らかだ。

03年にイーロン・マスクによって創業されたテスラは、わずか14年で年産8万台を誇り、世界中の自動車メーカーがその動向を注視するほどの自動車メーカーへと成長した。最初の市販車となる「ロードスター」は、パワフルな加速感がセリングポイントの2人乗りのスポーツカーであり、従来の“エコカーの常識”を打ち破った。

それに続く形で世に送り出された「モデルS」は、5人/7人乗りのアッパーミドル・サルーンにもかかわらず、スタイリッシュな外観とスポーティな走りっぷりで世の中に広く受け入れられた。そして、わずか数年の間に、アメリカで人気のSUVボディを持つ「モデルX」の発売まで漕ぎつけたのだ。

ボディサイズは5037×2070×1680mmと、アメリカのプレミアムSUVとしては標準的なディメンションだが、バッテリーと電気モーターといったパワートレインをフロア下に内包することにより、低く、スポーティなスタイリングを持つ。さらに、空に向かって羽ばたくかのように開閉する“ファルコンウィング”が個性を際立たせている。

シリコンバレーの旗手たちが、「自分たちが乗りたくなるようなカッコいいエコカーを作る」と一念発起して創業したテスラの企業理念は、このモデルXに至って色褪せるどころか、ひときわ色濃く、テスラのプロダクトに投影されている。

DATA
駆動形式:電動AWD
全長:5037mm
全幅:2070mm
全高:1680mm
最高出力:フロント259ps/リア503ps
価格:10,400,000円~(車両本体価格・税込み)
問い合わせ:テスラモーターズジャパン(0120-982-428)

テスラの自動車製造を担う、フリーモント工場

サンフランシスコ東部に位置するテスラのフリーモント工場。開設された当初は、GMとトヨタの合弁工場だった“NUMMI”の跡地の活用で話題になったが、今では年産8万台を誇るまでに成長。さらに新型「モデル3」の生産もスタートした。

自然光が注ぐ明るい室内空間は、一般的な自動車工場とは一線を画す。EVゆえにオイルによる汚れを案じる必要がないため、壁がオフホワイト、フロアが明るいグレーで塗られているからだ。



「モデルS」用ラインで使われるドイツKUKA製ロボットはテスラ専用の赤に塗られており、「モデルX」のために新設されたラインでは、日本が誇るファナックの世界最大のロボットが並ぶ。この巨大ロボットはマスクCEOのお気に入りで、人気のアメリカン・コミックの登場人物の名で呼ばれている。アルミロールから樹脂パーツまでフリーモント工場で一貫した品質管理がなされる非常に贅沢な工場である。

text by Yumi Kawabata edit by Tsuzumi Aoyama photo by Tsukuru Asada (secession)

この記事は 「Forbes JAPAN No.40 2017年11月号(2017/09/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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