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例えば、トランプ氏は最近、イランとの核合意の破棄を示唆した。この合意はイランが核兵器開発をやめる代わりとして欧米6カ国が制裁を解除したもので、北朝鮮に核放棄を呼び掛ける説得材料の一つだった。こうした大前提をひっくり返される不安があるのだ。

さらに、激震が走ると予想されているのが、「貿易」である。トランプ氏は日中韓3カ国歴訪の最重要課題の一つとして貿易を掲げており、自由貿易協定(FTA)の一方的な押し付けや既存の合意の見直しを迫ってくる可能性がある。

オバマ前大統領は任期中、外交安保や経済でアジアに軸足を移す「リバランス(再均衡)政策」を打ち出し、その象徴として11年から東アジアサミット(EAS)に参加、内政問題で急きょ取りやめた13年を除き、毎年出席していた。東アジア域内の「秩序や規範」の確立を主導し、中国を取り込むのが長期的な狙いだった。しかし、こうした方針は雲散霧消してしまう恐れがある。

トランプ氏は12日にEASが開催されるフィリピンに足を運ぶものの、東南アジア諸国連合(ASEAN)との首脳会議を終えたら、EASそのものは「スキップ(欠席)」する。日中韓など各国首脳とは個別に会談するから「議論だけの会議」(国務省当局者)は必要ないということか。東アジアの国際協調主義を米国が主導しようという目論見は、米国とアジア各国の2国間主義に取って代わられつつある。

日本がトランプ氏の「安倍好き」にあぐらをかいているうちに、アジアはいつの間にか分断と疑心暗鬼の地域に変容してしまうかもしれない。

文=水本達也

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