─中長期的な視点をどう身につけたか。
デスティネーション(目的地)の意識が重要だ。街を歩く人に「何をしているのか」と尋ねて、「歩いている」と答える人はいない。普通は「駅に向かっています」とデスティネーションを意識しているはずだ。
ところが仕事になると、「キーマンは誰だ、この機種を売る」といった方法論が主になり、「どんな果実(成果)を得たいのか」といった最終的なゴールが忘れられがちになる。近視眼的に目の前で起きることに一喜一憂する傾向になる。中長期的な目的地を明確に持つことが大事だ。車の運転でも、安全運転のために、直前の車のみを見ないようにするのと同じだ。
─370億ドル市場で勝つための方法論を聞きたい。
強いネクストジェネレーションプロダクトを持ちたい。そのためには伸びるセグメントへのフォーカスが必要だ。弱気な予測だとリスク分散で複数のセグメントに投資したくなるが、必ず伸びる確信があるので、半導体とFPD(フラットパネルディスプレー)に投資を集中させた。研究開発のリソースを共有するため、ビジネスユニットも6つから4つに再編した。技術的なシナジーが見込めるうえに、重複した開発が回避できて効率化にもつながる。
一方、コモディティ化への対応も急務だ。じつはIoTで求められるのは付加価値の高いものばかりではなく、むしろコストの低い汎用製品のニーズも高まっていく。一般的にコモディティ化はネガティブ要因とみなされるかもしれない。
しかし、そこにもオポチュニティがある。当社の出荷済み装置台数は業界最大規模。メンテナンスなどのスマートサポートサービスを展開して、お客様の装置の稼働率を最大化していくフィールドソリューション事業は将来性が高く、大いに期待している。
かわい・としき◎1963年、大阪府生まれ。86年明治大学経営学部卒業、東京エレクトロン入社。2015年代表取締役副社長、最高執行責任者、事業推進統括本部長、事業推進統括本部ビジネスユニット本部長。16年より現職。