ところが、今年はどうも違っている。一般公開に先駆けたプレスデイの初日、会場となる東京ビッグサイトを11km歩き回って分かったのは、日本のカーメーカーがデザインを重視するときが、ついにやって来たということだった。「デザインがよくなれば、日本車はもっと人気がでる」と言い続けてきた僕としては、やっとそのときが来たかと気分が上がる。
各メーカーが、将来のデザインにセクシーさを注入し始めたことを確信した。いや、どのメーカーも、電気自動車(EV)、自動運転、人工知能、つながる化に対しての姿勢を見せているのは、もちろんだけどね。
だが、やはり目につくのは、そういう自動運転などのテクノロジーの面ではなくデザインだった。つまり、どのメーカーにも明らかに、デザイナーたちに外観をもっと楽しく、セクシーで視線を奪うスタイルに挑戦させる余裕が見られる。ただ、この1年間ずっとウワサされていたトヨタ・スープラの後継車や、新しい日産フェアレディ、あるいはマツダのロータリー・クーペの、より市販車に近づいたコンセプトなどは登場しなかった。
2017年東京モーターショーで、デザイン競争をリードするのはマツダだ。同社がかかげるデザイン言語「Kodo」に加え、目を惹き付けられたのは、ヴィジョン・クーペだ。その息を飲むゴージャスさが脚光を浴びている。「これはもしかして世界一美しいセダンかもしれない」と同業のドイツ人が言った。エンジンについては何も語られていないが……。日本で一番かっこいいクルマのラインナップをそろえるマツダだが、このコンセプトでさらにスケールアップしている。
マツダのヴィジョン・クーペ
この流れは、うれしいことにスバルにも見られる。ヴィジブ パーフォーマンス・コンセプトは、スバル史上かつてなく美しいコンセプト車だと僕は思った。こちらも、エンジンについての詳細は「スバル特有のボクサーエンジンと4WD、さらにアイサイトの安全技術の進化版はつくだろう」との曖昧な表現しか出してない。
なぜだろうか? 世界中の自動車業界は、昨年からEVに大きく舵を切っている。が、将来どのパワートレーンを採用するかについては、明確にしないことによって、考える時間を取っているのだと考えた。おそらく電気だとしても。
スバルのヴィジブ
ヴィジブは目をとらえる美しい4ドアのスポーツ・セダンだ。三次元のグリルから、鷹の目の形をしたヘッドライド、筋肉的なふくらみを見せるリアのブリスターフェンダーまで、どれも力強く鋭く見える。そして、次世代WRXがどんなデザインになるのか、そのヒントをはっきりと巧みに示しているように感じた。これからの10年、BRZ以外のスバル車に用いられることになるグローバル・プラットフォームをヴィジブも採用する。
ホンダのEVスポーツ・コンセプトも、セックスアピールをたっぷり取り戻した。フランクフルト・モーターショーで披露されたアーバンEVコンセプトを基本とするEVスポーツは、車高が低く、流れるような後輪駆動プロポーションで、しかも低重心のデザインは、ドライブがごきげんになる楽しさを約束している。
僕としてはシンプルさ、レロト感、スポーティさと未来感というコンビネーションが気に入った。でもなにより新鮮なのは、ホンダが再びデザインにセクシーさを取り入れようとしていることだ。このクーペもやはりパワートレインはEVということ以外、詳しいことは言っていない。