パワー・オブ・コミュニケーション、仕事と食事の美味しい関係|出井伸之

クオンタムリープ代表取締役 出井伸之氏


ABC級グルメの会もよいが、私はファミリーでの食事を本当に大切にしている。家族3世代、ときには4世代で、週末に集まり、お祝いをしたり成長を楽しむ。それは心安らぐひとときだ。

食べることが好きな人は、コミュニケーションにおいても達人だと思う。自分が食を楽しむことも、食で人を楽しませることも知っている。それゆえ、ビジネスでも成功している人が多いのではないかなと思う。私はそういった先輩方をこれまでにもたくさん見てきたし、一緒にテーブルも囲んだ。食事での会話から、発想が生まれ新しいことに繋がることも珍しくない。時代を超えても、食とコミュニケーションは深い繋がりがある。

食事と仕事の面白い関係

一方で、仕事メシ、特に昼はサッと済ます。例えば、東京ミッドタウンのある行きつけのユニオンスクエア東京では、「いつもの」と言ったらすぐにシェフズサラダとホームメイドバーガーで出てきて、ささっと食べる。

私が若い頃だが、食と仕事のエピソードで印象深いことがある。盛田さんに突然呼ばれ、「新卒の採用の基準として何かよい案はないか」と聞かれたので私はしばらく考えてから「入社試験でお弁当を用意して、早く食べた人から採用というのはどうでしょう」と答えたところ、盛田さんは「それはいい!」と採用担当者に電話しそうになったので、私は「いやいや、冗談です!」と慌てて取り消した。

盛田さんは、食べるのは早かったし実はゴルフでラウンドするのも早かった。前述のフレンチ、マキシム・ド・パリでの食事さえも早かった。仕事が早いというのは、周りの状況が見えて次のアクションに備えようという心構えがあるのではないかと思われる。私も食べるのは早いし、周りにいる人たちも早い人が多いのではないかと思っている。

今までの経験からしても、食を通しての人との付き合いは着実に深まり、そこからのコミュニケーションによって関係性はさらに発展すると思う。だからこそ、私はグルメではないが食べることが好きだし、とても大切にしている。

文=Quantum Leaps Corporation 写真=岩沢蘭 撮影協力=Union Square Tokyo

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