各国で相次ぐIS元戦闘員の帰国、「脅威」は高まるのか

Eng. Bilal Izaddin / shutterstock.com

過激派組織「イスラム国」(IS)はここ数か月の間に、支配地域の多くを失っている。「首都」としてきたシリア北部ラッカと、イラク最大の拠点だった同国北部モスルでの敗退により、ISにとっての状況は一層悪化している。

外国人戦闘員としてISに加わり、その後に帰国した元戦闘員たちがそれぞれの国にどれだけの脅威をもたらす可能性があるのか、そのレベルを評価するのは難しい。だが、各国にはいずれも、この問題に関する戦略を立て、対応に必要な情報を共有するため、迅速に対策を講じることが求められている。

約4万人が外国人戦闘員に

米国のシンクタンク、ソウファン・センター(The Soufan Center)が先ごろ発表した報告書によると、過去2年間には33か国が、ISに外国人戦闘員として加わっていた自国の市民・居住者が帰国したことを報告している。帰国した元戦闘員の数は、合計5600人程度とされる。

これまでに外国人戦闘員としてISに参加した人は、110か国の4万人近くに上ると推計されている。ISが訓練や作戦の拠点としてきたラッカなどの都市が陥落したことで多くのデータが回収されており、そのうち少なくとも1万9000人の身元が特定されたという。だが、残る多数の戦闘員らについては、詳しいことは明らかになっていない。

すでに確認されているところでは、ISに加わっていた外国人戦闘員の中で最も多くを占めていたのは、ロシア出身者だったということだ(3417人)。そして、このうち約400人は、すでに帰国したと見られている。次いで多かったのはサウジアラビア(3244人)で、うち約760人が自国に戻ったとされる。

欧州連合(EU)加盟国からは、合わせて約5000人がISに加わったと見られている。この中ですでに帰国した人の数は、およそ1200人とされる。域内で最多だったのは英国出身者で、うち425人が帰国したとされている。また、ドイツとフランスではそれぞれ300人、271人が自国に戻ったと見られる。米国人は129人が戦闘員となり、うち7人が帰国したという。

シリア・イラクから帰国したISの元戦闘員の数(2016年3月~2017年8月の推計、左は帰国者数、右は戦闘員数)

・ロシア:400/ 3417
・サウジアラビア:760/ 3244
・ヨルダン:250/ 3000
・チュニジア:800/ 2926
・フランス:271/ 1910
・モロッコ:198/ 1623
・トルコ:900/ 1500
・ドイツ:300/ 915
・英国:425/ 850
・ベルギー:102/ 478
・スウェーデン:126/ 300
・米国:7/ 129

編集=木内涼子

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