テストのポイントは2つ。まず、専門用語が使われていないこと。そして、飲み物を置くコースターに書き込めるほど簡潔なこと。
「あなたの提案がビールのコースターや、ナプキン、封筒の裏に書き込めないほど長いなら、私はそこに収まる長さの別の提案を聞きたい」。ブランソンは、新たな自伝「ファインディング・マイ・ヴァージニティー(Finding My Virginity)」の出版に当たり行われたインタビューの中で語った。「良いアイデアのほとんどは端的に表現できる」
ブランソンは、ビールのコースターから始まった30億ドル(約3400億円)企業の話を聞かせてくれた。話は、欧州の航空会社ヴァージン・エクスプレスのブルッド・ゴッドフリー元最高財務責任者(CFO)に始まる。
ゴッドフリーは家族とオーストラリアに戻るために同社を辞めようとしていた。ブランソンはゴッドフリーの前途を祝い、「もしオーストラリアで何かやりたいことがあれば教えてくれ」と伝えた。
少し間を置き、ゴッドフリーは答えた。「そう言ってもらえるとは奇遇だ」。彼には実際、考えていることがあったのだ。彼は、アイデアを書き留めたビールのコースターを探す間、少し待ってくれるようブランソンに言った。
その瞬間に生まれた会社がヴァージン・ブルー。オーストラリア第2位の航空会社である現ヴァージン・オーストラリア航空だ。
「ビールのコースターが1000万ドル(約11億円)の投資に化け、3年後には30億ドルの企業になった」とブランソンは語る。最高のアイデアとは簡潔なものなのだ。「封筒の裏にまとめられないようなら、おそらくそれは駄目なアイデアだ。短く、鋭く、完璧にすること」
ヴァージン・グループが簡潔な提案から始めたビジネスは、ヴァージン・オーストラリアだけではない。
南アフリカのケープタウンに近いテーブル・マウンテンでのサイクリング中、ブランソンの義理の息子フレディ・アンドリューズはブランソンと並び、簡潔で魅力的な提案でブランソンの関心を射止めた。「スポーツのスウェット(汗)とヴァージンのスワガー(しゃれたスタイル)を組合せた活動を始めませんか」
アンドリューズは、ブランソンが朝からテニス、カイト・サーフィン、水泳をするほどフィットネスに目がないことを知っていた。ブランソンはこのアイデアを気に入り、こうしてスポーツの祭典「ヴァージン・スポーツ」が誕生した。