英マンチェスター大学の研究チームは、国内の674の家庭医(開業医)からデータを収集、2001〜14年に自傷行為をした10〜19歳の1万6912人を特定し、調査を行った。これらの10代の若者のうち、73%は女子、27%は男子だった。
自傷行為の経験がある10代男女の死因は、同様の経験がない同世代の若者たちと比べ、「自殺」が17倍、「薬物の過剰摂取・アルコール中毒症」が34倍、「事故死」が6倍高くなっていた。自傷行為は世界的にも、自殺につながる危険性が高い要因と指摘されている。
自傷行為をしていた女子の3分の1以上、男子の4分の1以上は、うつ病または不安障害と診断されていた。また、自傷行為をしたことがある女子には摂食障害が多く見られ、男子には注意欠陥・多動性障害 (ADHD)、自閉症スペクトラム障害(ASD)、行為障害、または統合失調症のいずれかの症状が見られるケースが多かった。
収集されたデータによれば、自傷行為のうち最も多かったのは「薬物の過剰摂取」(83%)だった。「刃物で傷つける」(12.3%)、「薬物以外の摂取による中毒」(2.5%)、「首つり・窒息・飛び降り・やけど」(1.1%)なども報告されていた。
また、自傷行為をしたことがある場合、男女ともそれぞれ約20%が初めて自傷行為をしてから1年以内に、同様の行動を繰り返していた。その後も何度もそうした行動に出るのも、女子の方が多かった。
支援不足が大きな問題
調査ではそのほか、自傷行為に走る10代の若者は貧困層が大半を占める地区に多いことも確認された。こうした地区では、家庭医からの紹介によって1年以内に精神科医の診察を受けた自傷行為の経験のある少年少女の割合が、その他の地区の同年齢の男女と比べて23%低かった。
ただ、自傷行為をしたことがある10代全体で見た場合にも、精神科の診察を全く受けていなかった人は56%と半数を超えていた。自殺以外の原因でも死に至るリスクが高くなる一方で、自ら体を傷つけた経験がある10代の若者たちは、十分な支援を得られずにいるということだ。
この調査は、国の医療制度から見て米国よりも診察を受けやすく、医療費もそれほど高額にはならない英国で行われたものだ。それでも、家庭医による継続的な臨床的取り組みが行われてきたことを示す記録はなく、研究チームは、より適切な介入の方法を検討する必要があると指摘している。
米国では、すでに同様の調査が多く行われており、若者たちの精神的健康に対する支援サービスが不足していることが問題視されている。