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2017.11.01

「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」は何がすごいのか

Photo by Tomohiro Ohsumi / Getty Images


一方の投資家側は、リーマン・ショック以降に世界的金融緩和が進んだ結果、お金がジャブジャブ余り投資先がなくなってしまいました。それでも、とにかくどこかに投資しなければならない。その結果、今まではIPO後の企業にしか投資してこなかったPEファンドなどがこの業界に参入してきたことが、ユニコーンやデカコーンが生まれるキッカケになりました。

桁外れの投資額


これが現状のVC業界です。そんな中に突如現れたのが、ソフトバンク・ビジョン・ファンドです。

普通、100億円から1000億円近くのお金を出すのはレイターステージの投資家です。当然ですがレイターステージの投資家は、PLやDAU、LTVなどの成長見込みを計算して、きちんとバリュエーションを策定してからお金を出します。

一方、初期のアーリーステージではそんなところを見ても仕方がないので、起業家やチーム、ビジネスモデル、ビジョンを見て投資するのがほとんどです。たかだか数千万円のお金だからですね。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは、理念で言えばアーリーステージのファンドなんです。それにもかかわらず、レイターステージ規模のお金を投資してしまう。そこが凄いのです。

「未来に何が来るかはわからない」とよく言われますが、はっきり言ってそれは嘘です。例えばソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資した米国ベンチャー「OneWeb(ワンウェブ)」が行なっているのは、人工衛星から電波を飛ばすことで世界中にネット回線を届けるビジネスです。携帯電話や光ファイバーを引くのは大変だから、衛星を通じたネット接続が主流になるのは確実。人口衛星ベンチャーのどこかが勝つというのは明らかなんです。

そこまでわかっていても、他の会社は、シード・アーリーステージからシリーズA→B→Cと実績を出しながら段階を踏んで投資しなければなりません。でも、孫さんはイケそうだとわかったら、最適なチームを見つけていきなり100億円出してしまう。普通のベンチャーが数千万円を調達するのに対して、いきなり、ひとつの会社が100億を集めてしまうのだから、この時点で勝負が付いてしまいますよね(笑)。

(後編は11月8日公開)

文=國光 宏尚

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