ビジネス

2017.10.25

フェイスブック幹部がメルカリの参謀になった本当の理由

ジョン・ラーゲリンCBO(左)山田進太郎CEO(右)


iモードの立役者、夏野剛と海外進出戦略に携わり、アフリカ、中東、アジアをまわった。アメリカで起きている技術革新に参加したいという思いから、グーグルに転職すると、「アンドロイドの父」と呼ばれるアンディ・ルービンやCEOを務めていたエリック・シュミットと出会った。

シュミットは重要な交渉の席で、隣に座る若いジョンにも意見を求める。どんな相手に対しても認めることから始めるシュミットの姿勢を目の当たりにしたことに、彼は大きな影響を受けている。

山田がジョンのことを「誰が相手だろうと彼は話しあえる」と評するように、世界中で交渉ができるのは、経験を糧にしているからだろう。ジョンはグーグル時代にイベントで山田と知り合った。ジョンは山田のことを「若いのに精神年齢が高く、人生経験がある人だな」と思えたという。

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その山田は01年に起業している。写真を投稿・共有するサービスやゲームなどを開発し、10年にアメリカのソーシャルゲーム最大手ジンガの傘下に入ったが、12年に社を去った。山田の世界観を知るうえでヒントとなる話がある。スカイプが世界的なサービスになったとき、ある起業家が「やられた」と口にしたことを山田は記憶している。覚えている理由を彼はこう話す。

「スカイプのような技術はすでにあったのですが、ユーザーにとって簡単に使える点が画期的でした。技術以上に誰でもインストールすればすぐにインターネットを介して通話ができることが優れていたんです。グーグルも検索の技術だけではなく、ページランクというアイデアがあったから、社会にインパクトを与えたと思います」

スカイプの登場で、離れた場所で暮らす家族や友人が対話できるようになり、出会いや結婚、国境を越えたビジネスも容易になり、世界の人々から「距離」というストレスが解消された。13年に山田がメルカリを創業すると、エンジニアや起業家らが集まったのも、山田が築こうとする世界観に共鳴したからだ。

「売る」「買う」というC2C(個人間取引)は、企業と消費者という縦に流れる一方通行を変える。雨が降ったら軒先を貸すように、モノやサービスを融通しあう社会に、賛同者たちは未来形を見たのだ。



デモクラシーの機会だ

「転職なんて考えられませんでした」。14年、メルカリのアメリカ進出時、山田から入社の誘いをジョンは断ったという。フェイスブックに移ったばかりだったからだ。

この年、ジョンはダボス会議で面白い実験をしている。難民キャンプを360度撮れるVRカメラで撮影し、世界のリーダーたちにVRヘッドセットを装着させて、難民キャンプを仮想現実で体験させたのだ。「リーダーたちの気持ちが変わるんですよ」と、ジョンは振り返る。

「離れた所にいても、行ったことがあるような気持ちになって、共感を生む。技術が人と人を結びつけて、つながりを感じることが新しい価値を生むんです。これこそ、デモクラシーの機会だと思いました」

そう、ジョンも山田も違う場所にいながら同じ未来を見ていて、2人は同じ世界観を構築しようとしていたのだ。
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文=藤吉雅春 写真=クリスティ・ヘム・クロック ヘアメイク=アン・リーディ

この記事は 「Forbes JAPAN CxOの研究」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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