ビジネス

2017.10.30

誰が接待を殺すのか? こんな接待では先がない

Andrey Bashlykov / Shutterstock.com

某結婚式場を運営する企業から接待を受けた。どちらかと言うと、新しい感じではなく、古い印象の企業である。「ランチをしながらぜひとも」ということで向かった先は、ビッフェでなく食べ放題のバイキング。

エビフライに海老の天ぷら、チャーハンにカレーライス、焼きそばもあった。

決して痩せているとはいえないボクではあるが、適当に2〜3品を皿に乗せ、適当に口につけ、煮詰まったコーヒーを啜りながら、話を聞くことにしたが、心の中では、その会社の仕事をうけることを断念していた。

結婚式は、多くの場合、生涯に一度しかない大切な晴れの舞台。それを提案する企業が、「好きなものを適当に食べろ!」という適当なバイキングというのはあまりにも企業風土としておかしい。それに広報というのは、こだわりの塊でなくてはならない。だが、「適当に食べろ!」とは提案もクソもない。「ここの魚料理、本当にこだわっているんです」などと独自性を出してもらえると、そのこだわりに興味が湧いたり、驚きを感じたりする。

ところがバイキングでは、落ち着いてビジネスの話をすることもできない。仕事を依頼したい担当者は、何度も席をたち食べ物を取りに行っていた。ボクとのミーティングというよりも沢山食べたいという方に気持ちがあったと思われる。ということで、その会社の仕事は引き受けなかった。

接待とは、自社のプレゼンテーションの場であり、交渉の場である。懇親会ではない。美味しいものを食べたいだけなら自分のお金で食べればいい。夜の接待の場合は家族との夕食を犠牲にしてきて、仕事としてやってきているのだから、ちゃんと仕事の話をしたいものだ。

接待は一にも二にも「店選び」

過去にはこんなこともあった。東証一部上場企業の放送局のプロデューサーに「企画の相談がある」と言われて連れて行かれた先が、チェーン店の居酒屋さんでびっくりしたことがある。高いとか安いのとかの問題ではない。食べながら、どうでもいい話が続いた。同じようなことは何度もある。

こんなこともあった。会議の流れで、急にその場にいた若手のクリエイターを接待することになった。だが、ボクは30分ほど遅れた。「先に、そのあたりの好きな店に入っていてくれ。金ならボクが払う」と頼んだ。

あとから追いかけると、彼らは当時問題になっていた居酒屋で飲んでいた。「なんでお前らはこんなブラック企業に入っているんだ。どうせボクが金を払うのだし、クリエイターらしい店を選べ」と注意して、行きつけのイタリアンレストランへ連れて行ったことがある。クリエイターは、店選びでもクリエイトすることを忘れてはいけない。

接待は店選びが9割だと思う。別に高級な店である必要はない。店選びから仕事は始まっている。ポイントは、自分が普段から行っている店の中から、その相手に会う店を選ぶこと。

「野呂さん、この店のアジの開きがうまいのです」
「この店のシェフを是非とも紹介したかったのです」
「ここの日本酒のラインナップ、最高でしょう」

と言われれば、誰だってワクワクするだろう。相手をワクワクさせる、さりげない演出が仕事の決め手となる。
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文=野呂エイシロウ

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