過剰な運動は心疾患リスクを増大か、25年の追跡調査で確認

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過去の研究結果から、運動不足は私たちの健康に役立たないことが分かっている。その一方で、過剰な運動も健康を促進するのではなく、害になる可能性があることが確認された。

新たに発表された長期的な追跡調査の結果、継続的に推奨量を大きく上回る運動を行っていた人は適量で行っていた人に比べ、冠動脈に石灰化が見られる割合が高いことが分かった(特に白人男性の場合)。ただ、一般的に石灰化の程度を見ることは心臓の状態を見る良い指標とされているものの、運動量と石灰化の程度との関連性は、今のところあまり明確になっていない。

25年にわたる追跡調査

米医学専門誌「メイヨー・クリニック紀要」に掲載された論文は、「若年成人における冠動脈リスクの発症(CARDIA)に参加した成人男女およそ3200人に関するデータの分析結果をまとめたものだ。参加者たちは25年の調査期間中にわたって自身の身体的活動を報告。少なくとも3回(最大8回)の身体検査を受けた。

研究チームは参加者らを運動量によって全体を3つのグループに分けて分析を行った。推奨される運動量が1週間当たり150分であることから、同150分未満と150分以上、450分以上に分類、それぞれの身体活動に関するスコアを算出した。さらに、毎回の検査時にはコンピューター断層撮影(CTスキャン)による冠動脈石灰化(CAC)レベルを測定したほか、血中脂肪量、空腹時血糖値、コレステロール値も調べた。分析においては、結果に影響を及ぼし得る複数の変数(体重、年齢など)を考慮している。

その結果、チームは次の点を確認した──調査期間中、推奨される3倍以上の量の運動をしていた人は、CACを発症するリスクが27%高まっていた。中でも参加者の4分の1を占めた白人男性では、運動量が最も少なかったグループに比べ、CACレベルが86%上昇していた。

ただし、ここで疑問になるのは、過剰な運動が理由と見られるCACレベルの上昇は、心臓病の前兆なのかどうかという点だ。研究チームはこの点について、「長期にわたる過剰な運動は冠静脈にストレスを与え、それがCACレベルを引き上げている可能性がある」と指摘している。チームは今後、こうした結果が将来的な健康上の問題につながっていくのかどうか、さらに詳しい調査を行う予定だ。

重要なのは「バランス」

過去のその他の研究でも、運動しすぎは長期的には健康に悪影響であるとの結果が示されている。数年前には、過度のジョギングは軽度~適度のジョギングに比べ、死亡リスクとの関連性が高いとの結果が発表された。

だが、当然ながらこうした結果は、運動はしない方が良いということを意味するものではない。身体的活動は、健康的な体重や代謝、血圧を維持するため、がんや糖尿病、アルツハイマー病のような慢性疾患のリスクを低減させるための、最善の方法の一つであることに変わりはない。

また、これまでに発表されている多くの研究結果は、いつでも座っていることはさまざまな慢性病の発症や死亡のリスクを高める要因であり、長期的な健康にとって最悪の行動の一つであることを示している。

編集=木内涼子

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