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2017.10.30

米国の女性起業家が直面する「出資の不平等」という現実

KieferPix / shutterstock.com

何かがおかしい。ダナ・カンズがそう気づいたのは約8年前、自身がニューヨークで創業したアプリ開発のスタートアップ「Moonit Labs」の資金調達を行なっている時だった。同社のCEOだった彼女は、COOでプレジデントを務める共同創業者の男性とともに投資家たちへビジネスプランを売り込んでいたが、二人が受ける質問の方向性が異なっていたのだ。

「私は繰り返し、事業が失敗する可能性について質問されました。ところが男性の共同創業者は、企業理念や成長の可能性、投資家がどれだけ利益を得られるかについて聞かれたのです」と、カンズは振り返る。当時、カンズと共同創業者はペンシルバニア大学を卒業して約10年目で、投資銀行で働いていた。両者の経歴に差があったわけではない。

それでもカンズは300万ドルの調達に成功し、Moonit Labsを急成長させた。しかし5年間同社を率いた後、学問の世界に転身。コロンビア大学ビジネススクールで経営科学の博士課程に進み、今年の夏、論文「男性には成功を求め、女性には失敗しないことを求める社会:スタートアップ資金調達におけるジェンダーギャップ」(We Ask Men to Win and Women Not to Lose: Closing the Gender Gap in Startup Funding)を「Academy of Management Journal」誌に発表した。

同論文は、スタートアップ・コンペ「TechCrunch Disrupt New York City」の2010年から2016年までの回に参加した、起業家189名と投資家140名のやりとりを分析したものだ。カンズによると、投資家が男性起業家に投げかけた質問の67%が成功によってもたらされる利益を重視する“促進焦点型”で、「あなたのビジネスに成長の可能性があることはわかったが、どこまで成長できるか」を訊ねる内容だったという。

一方、女性起業家に対する質問の66%は失敗によってもたらされる損失を重視する“予防焦点型”であり、「現状維持できればいいが、できなくなったらどうするのか」を問う内容だった。男女を問わず、予防焦点型の質問を受けた起業家の大半は、予防焦点型の回答を述べている。

マイナスをプラスに転換する能力

質問の方向性の違いは、資金調達額にも如実に反映される。カンズが行ったシミュレーションでは、主に促進焦点型の質問を受けたスタートアップが平均1680万ドル(約19億円)を調達したのに対し、主に予防焦点型の質問を受けたスタートアップの平均調達額は230万ドル(約2.6億円)に留まったのだ。

この不平等に女性起業家はどのように立ち向かえばいいのだろうか? カンズのアドバイスは、予防焦点型の質問に対し、促進焦点型の答えを返すことだ。
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編集=上田裕資

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