インターネットは「母親の呪い」を解き放つ?

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昔は長屋住まいだったから、子どもは放っておいても、近所のおばちゃんとかおじいちゃんから何を褒められるわけじゃないですか。例えば僕の娘は、母親の実家が美容室をやっているので、そこに遊びにいって、待合室でよく本を読んだり絵を書いたりする。それを見たお客さんが「えっ、そういう本を読んでるの!偉いねえ」とか「素敵な絵を描くのね」と褒めてくれたり、「こんな色を使ってみたらどう?」と意見をくれたり、とにかくおもしろがってくれる。
 
あらゆる価値観から褒められる体験を、いろんな角度から受ける。すると、「こういうことをやってもいいんだ」という意識が積み重なって、お母さんから植え付けられた価値観が2分の1になり、3分の1、4分の1と少なくなっていく。すると、いろんな人から褒められるなかで、「本当に褒められたいものはなんなんだろう?」という自分の価値観を築き上げていけるようになるのです。
 
インターネットの長屋文化に繋がろう

僕らの世代にとって幸福なことは、インターネットやSNSによって、複数のコミュニティに簡単に所属できることだと思います。インターネットがない頃は、どうしても自分の価値観を住んでいる場所、働いている会社に縛られることが多かった。さらに困ったことに、住んでいる場所と働いている場所の価値観がすごくリンクしていることが多くて、結局ひとつの価値観しか得られなかった。

すると、特定の価値観に、鎖で縛られざる得ない状況になる。でも今は、やろうと思えば、ネットに飛び込めば、いくつでも価値観のあう、複数の価値観のコミュニティに所属できるから、いろいろな居場所があって、そこではお互いに優しく接したり、知識とかお金とかをシェアしあっているから、自分の鎖を解くことができる。自分の成功体験を糧に、母親に対しても呪いを解いてあげることができれば、母親の価値観の鎖もとけるようになる。

炎上を恐れて、誰かに批判されないか? と怖がる方も多いかもしれません。確かにネットでは一部の心ない方が傷つけてくることもあります。でも、ネットだとそういう時こそ逃げていいんです。あなたの居場所はどこかで見つかります。誰かが傷つけてきたとしてもそれをカバーする人も現れやすくなっていると思います。

そんな風にインターネットやSNSを活用してみれば、まだまだ僕らは、インターネットで個人の革命を起こすことができるんじゃないかと思うのです。

尾原和啓の連載「働き方革命最前線─ポストAI時代のワークスタイル」
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文=尾原和啓

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