「カメラが2つあるとデメリットもある。我々は、1つのカメラで2つ分の性能を発揮できると考えた。背面カメラにはデュアルピクセルのイメージセンサーを使用しており、1つのカメラで2つの異なる写真を撮影し、深度マップを作成することができる。これにより、ポートレイトモードで撮影したり、被写体だけにピントを合わせることなどができる。また、”HDR+”という優れたアルゴリズムにより複数の画像を1つに合成し、明暗が混ざった状況や、暗所でも素晴らしい写真を撮ることができる」とオスターローは話す。
「デュアルカメラを搭載することがハードウェア的に優れているとは限らない。2つの画像を合成する処理は同じであり、我々はソフトウェアが優れているからこそ、少ないハードウェアで同じ効果を出すことができる」と彼は言う。
しかし、いかに優れたAI技術を保有していようと、グーグルがコンシューマ・エレクトロニクス業界で主要プレーヤーになるためには、多くの課題を克服しなくてはならない。
昨年は、Pixelの生産が需要に追い付かずに欠品が生じた。まずは製品の量産体制を整えることが重要だ。同社は、今年は欠品を起こさないとしているが、予定販売数は明らかにしていない。
パートナー企業への配慮も必要
また、グーグルのハードウェアが大量に売れるようになれば、サムスンなど、AndroidやChrome OSを製品に搭載しているパートナー企業を苛立たせることになりかねない。だからこそ、グーグルは自社の製品をパートナー企業の製品と比べないように細心の注意を払っている。
「OEMにはそれぞれの強みがあり、企業ごとに強化したい市場や分野が異なる。我々は、全てのユーザーに最高の体験を提供したいと考えている」と別のグーグル幹部は話す。彼の言う「ユーザー」には、一般消費者だけでなく、サードパーティ製ハードウェア上でグーグルのソフトウェアやサービスを利用するパートナー企業も含まれる。
しかし、グーグルとしては、長年の投資によって獲得した膨大なAIテクノロジーを、自らの手で消費者に届けたいというのが本音だろう。「我々がハードウェアを作るのは、我々のテクノロジーを使ってできることを示すことが最大の理由だ」とオスターローは話す。AI等の先進的なイノベーションをフル投入した、他社の追随を許さない完璧な製品を投入することが、グーグルの真の狙いなのかもしれない。