グーグルがAI全力投入で挑む「ハードウェア革命」の未来図

グーグル「Pixe」(Photo by Spencer Platt / Gettyimages)


AIをフル投入したデバイス群

しかし、デバイスは今後、ユーザー体験のためのツールに過ぎなくなり、最高のユーザー体験はAIや機械学習によってもたらされるようになる。グーグルはこれらの分野で長年世界をリードし、アップルを大きく引き離している。

ソフトウェアの品質もユーザー体験に大きな影響を与えるが、AndroidとiOSの差はかなり縮まっている。また、ハイエンドなハードウェアでは部品の差もなくなり、差別化がますます困難になってきている。

こうした中、AIと機械学習の劇的な進歩によって、再びライバル製品と差別化を図ることが可能になった。グーグルの現CEOであるサンダー・ピチャイは、AIにおける自社の強みを最大限活かすべく、ハードウェア事業への再参入を迅速に決断したのだ。

10月4日に発表されたハードウェア製品群は、ピチャイのAI戦略を初めて体現したものだと言える。「AIソフトウェアとハードウェアを組み合わせることで、競合製品にはない優れたユーザー体験を提供することが可能になった」とオスターローは発表会の後に筆者に語った。

グーグルの新型イヤホン「Pixel Buds」は、その良い例だ。アップルのワイヤレスイヤホン「AirPods」も人気を博しているが、Pixel Budsにはアップルをはじめ、他社が成し得なかった革新的な新機能が搭載されている。それは、40ヶ国語に対応したリアルタイム翻訳機能だ。発表会でのデモでは、スウェーデン語の会話を見事に英語に訳し、聴衆を驚かせた。

ハイエンドなスマートスピーカー「Home Max」のデモも興味深いものだった。Home MaxはAIアシスタントの中で最も優れていると言われる「グーグルアシスタント」を搭載しており、食器洗い機を使用中であれば音量を上げるなど、室内の状況に応じて音量を自動調整することができる。

グーグルは、AIをあらゆる製品に統合している。例えば、新型の「Pixelbook」は本体だけでなく、スタイラスペンにもアシスタントを起動するボタンが組み込まれている。スタイラスペンで画面上の画像を丸で囲むと、アシスタントがその箇所を認識して関連情報を表示してくれる。また、スマートカメラの「Clips」は、子供が側転をしたときなど、記録に残したい瞬間をAIが認識して写真や動画を撮影してくれる。

「最高のカメラ」を支えるのもAI

PixelもAIを搭載しており、現在売られているスマートフォンの中では最高レベルの評価を得ている。特に評価の高いカメラ機能については、光学技術やセンサーが特段優れているわけではなく、ソフトウェアとAIに依るところが大きい。

アップルやサムスンの端末は、背面カメラにデュアルレンズを採用しているが、Pixelで自信を深めたグーグルは「Pixel 2」でシングルレンズを採用した。DxOMarkの調査では、Pixel はiPhone 8を含む他のスマートフォンを抜いて最高評価を獲得した。
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編集=上田裕資

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