ビジネス

2017.11.17

世界を変えるエンジニアを育む「反転授業」と「ソーシャルな環境」

建物内に4つしかないというレクチャールーム。ディスカッション主体の授業がここで行われる。いくつかの座席がクラスター状に集まり、少人数での議論を容易にする。


エンジニアリングは「世界を変える」ためにある

3つめが「50/50チャレンジ」。現在カナダでは、エンジニアリングを学ぶ女性は学生全体の17〜18%程度。男女比の偏りを是正する。

「これではまるで母や娘、妹のいない食卓のよう。エンジニアリングの世界は女性の視点を見失いがちです。このままではいけない。女性エンジニアの育成は、当校の大事なミッションの1つです」(コジンスキー氏)


コミュニケーションスペース。学生と教員が分け隔てなく交流し、問題解決を図る。

何のためのエンジニアリング教育か。世界の問題を解決するためである。そう考えるラソンドに集まる学生もまた「世界を変えたい」という言葉を口にする若者たちだ。はじめに情熱ありき。1年次の最初の1カ月は解決するべき問題を徹底的に考えさせるというカリキュラムが一層学生の情熱をたきつける。

「まず“自分のパッション・プロジェクトを作りなさい”と指導します。アフリカで水の浄化システムを作りたい、貧しい人に食べ物を届けるスマホアプリを作りたい。そういう情熱が大切です。数学や物理を学ぶのはそのあとでいい。プロジェクトを実現させるためには、何が必要なのか。学生自らが学びの必要性に気づく。私たちのカリキュラムはそこから始まるのです」(コジンスキー氏)

ラソンドでエンジニア教育の新しい姿を見たい

ラソンドを収容する建物は、暗くなると雲が宙に浮かんでいるように見えることから「floating cloud of knowledge(ふわふわ浮かぶ知識の雲)と呼ばれている。

その隣には「コクーン(繭)」と名付けられた学生アントレプレナーを対象にしたビルが建設予定。将来的には生物工学、化学工学を教えるスペースとリサーチセンターを同じビルの中に作り、ラソンドのエンジニア教育の領域をさらに広げていく構想もある。


主に機械工学の学生たちが使うメカニカルワークショップ。大学間で競うマーズ・ローバー・チャレンジ(火星探査機コンテスト)などに出品するロボットやソーラーカーの開発が行われている。地下の施設だが、天窓から自然光が入るつくりだ。

「これらを実現するためには多くの資金が必要ですが、私たちは政府、大学、個人からの寄付に恵まれています。これまでの経験からわかったのは、寄付者は新しいアイデア、今までとは違うもの、自分が信じられるものに資金を出してくれるということです。ラソンドは人の心に響くことをやっている。みながエンジニア教育の新しい姿を見たいと願っているのです」(コジンスキー氏)

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text by Yusuke Higashi photographs by Kazuhiro Shiraishi

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