ビジネス

2017.10.26 14:30

行政やNPOとの提携は「地域への通行手形」になる


企業経営において、行政やNPOが参加するコレクティブ・インパクト型事業に参加する理由は何でしょうか。

事業を新しい地域で展開する時に、その地域にスムーズに入り込めるからです。ココネットが買い物代行と見守り事業を始めたのは福岡からでしたが、認知されるまで3年もの歳月がかかりました。見ず知らずの企業が「お買い物を代行します」と言っても、誰も信用してくれません。地域のスーパーとの連携などからようやく周知され、信頼されるに至ったという経緯がありました。

今回のように行政やNPOも参加しているコレクティブ・インパクト事業への参加は、いってみれば「地域への通行手形」をいただくようなもの。それは企業にとっては大きなメリットですし、物流のような、行政やNPOからすれば彼らではできないことを我々はすぐに実現できます。こうしたそれぞれの持つ強みの掛け算によって、地域に社会的なインパクトを生み出せると考えています。

今後の構想を教えてください。
 
ココネットで配達しているスタッフも子育て中の母親は非常に多く、こども宅食のモデルが全国に広がった際に、配達先のお母さん方からも働いていただける方が出てくれば、とも願っています。この事業のために我々は運送費を大幅にディスカウントしていません。CSRではなくあくまでも事業との位置づけです。

買い物代行事業もそうですが、こうした社会性のあるサービスは利用者にとって、いわばライフライン。企業の事情で勝手に止めるわけにはいけません。だからこそ、美談の裏には綿密なビジネス設計が必要なのです。

ココネットによるこども宅食事業が、民間企業が異なるセクターの団体と連携し、経済合理性を担保しながら、社会のためになるイノベーションを起こせるという象徴的なモデルになるべく邁進していきます。


河合秀治◎ココネット社長。専修大学経済学部卒業。西濃運輸、セイノーホールディングスの現場を経験し現職に就任。セイノーHDオープンイノベーション推進室室長を兼務、各種プロジェクトを仕掛ける。

文 = 柳瀬 徹

この記事は 「Forbes JAPAN No.39 2017年10月号(2017/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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