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もう一つ、人間に特有の非言語的要素は「触れること」だ。これはコミュニケーションの最も原始的かつ基本的な方法だと考えられており、脳は自分に触れた人に対して親密さをより感じるようにプログラムされている。

触れることで、相手とより強いつながりを感じることもできる。その力は強く、瞬間的に触れただけでも人間的な絆を生み出すことができる。腕を40分の1秒間触っただけで、触れられた人は気分が良くなるだけでなく、触れた人を親切で温かい人だと思うようになる。

また、直接対面の場は、イノベーションが生まれる場所であることも知られている。正式な会議や、ましてやバーチャルミーティングの中で、イノベーションが生まれることはほとんどない。創造的な考えは、大抵、何気なく同僚と話している時に生まれる。廊下で互いの状況について話す時や、休憩所でアイデア交換している時などだ。

イノベーションや協調に必要なのが関係性だとすれば、その中心にあるのは信頼だ。信頼を築くにも、直接対面するに勝る方法はない。信頼を築くにはさまざまな感覚を使うことが必要で、実際に一緒にいる時だけしか、全ての感覚を使うことはできない。

私が行う協調的なリーダーシップに関するセミナーでは、参加者はバーチャルなチームの結束を高めることの大変さについて語る。決して不可能ではないものの、バーチャルなチームで信頼を築くことの難しさ、まとめ役の出現率の低さ、真の会話を生み出す難しさ、誤解の起こりやすさについては多くの研究で示されている。

もし企業が積極的に在宅勤務やバーチャルチームを推進するなら(国際化が進む現代においては在宅勤務が必要なことも多い)、最初に対面式のミーティングの場を持てば、各自が持ち場に戻った後もチーム精神を保ち、生産性を高め続けられるだろう。

米カジノ・娯楽大手シーザーズ・エンターテインメントのマイケル・マッサーリ上級副社長(全国会議・イベント担当)は「業界を問わず、ビジネスは人と人とのつながりだ。どんなハイテク技術も、参加者の注目を集め、会話に参加させ、生産的に協調させるにあたり、対面式ミーティングの効率性にはかなわない」と語る。

在宅勤務やグローバルな仕事環境など、遠隔勤務者の存在は今日のビジネス社会における現実の一部だ。テレビ会議や電話会議が当たり前の世の中で、実際に会うことの重要性は見落とされがちだ。だが常に軽視されているわけではない。それはアップル、グーグル、シーザーズ、IBMに聞けば分かる。

編集=遠藤宗生

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