M2のギアをセカンドに入れ時速50kmでコーナーにステアリングをシャープに切って行くと、路面が滑りやすい分、フロントのタイヤが多少滑ってアンダーステアが出ると思いきや、いきなりフロントがグリップして今度は後輪の方が横滑り始める。こんな低い速度でアンダーとオーバーが瞬時に体験できる場所はここしかないんじゃないかなと思う。都内ではね。
ここは運転技術の基本が気楽に学べる場所だと思った。一瞬コントロールを失った状態からコントロールを取り戻すためのコツを教えてくれる、最高のテストコースだなと。BMW社はここを運転のトレーニングと、ジムカーナ会場として使うことにしている。
ここには、バーチャル・リアリティ・テストドライブのプログラムもあり、話題VRデバイス、オキュラス・リフトを使って体験者を近未来にワープさせる。3Dのゴーグルを付けた瞬間、あなたはこのショールームから、未だ建設されていない東京の高速道路に滑り込んでいく。このまぼろしの体験は、ある人にとっては不気味かもしれないが、非常にリアリティがあるので試してみる価値は高い。
きっと他のメーカーも、なぜテーマパーク・スタイルのショールームを最初に作るチャンスを逃したのか、と内心悔しがっているだろう。この広大な施設の多彩な設備は、どれもよくデザインされていて文句のつけようがなかった。強いて言えば、もしおしゃれなレストランがあったら、お台場で人気のデートスポットになるのにな。それをつくるだけの敷地の余裕はあるのだから。
日本でだんだん人気がなくなるモータースポーツやクルマ離れのカンフル剤として、テーマパークにもっとも近いスタイルのクルマのショールームが、一役買ってくれそうだ。
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