一部のアナリストらは、「恩恵を受けている」との考えを示している。だが、全ての人たちがそれに同意するわけではない。現在の状況は、簡単に「イエス」か「ノー」で答えられるほど単純ではないとの指摘もある。
(筆者注:仮想通貨市場はほぼ規制されておらず、仮想通貨やトークンへの投資は非常に投機的なものだ。投資を検討する人は誰でも、投じた資金の全てを失う覚悟ができていなければならない)
規制強化の動き
中国当局は今年9月、ICOを禁止した。同国の大手取引所3か所はこれを受けて同月末までに、国内での仮想通貨取引を近く停止する方針を明らかにした。
韓国の金融規制当局もまた、仮想通貨を利用した詐欺行為や「投機目的」と見られる需要が高まっていることが懸念されるとして、ICOを全面的に禁止すると発表している。
こうした両国の決定に先駆け、米証券取引委員会(SEC)は、ICOで発行されるデジタル資産は連邦証券法上の有価証券に当たり、その取引は規制の対象であるとの見解を示していた。
ビットコインが受ける恩恵
こうした状況は、ICOを所有する企業やトークンを購入した投資家たちにとっては問題となり得る一方、ビットコインにとっては追い風だとする向きもある。
ICOを取り巻く不確実性が高まっていることから、投資家らがアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)を売り、代わりにビットコインを購入するようになっているためだ。あるデジタル通貨トレーダーは、各国の当局がトークンの取引を禁止または規制する動きが見せれば、投資家はアルトコインではなくビットコインを持っておきたいと考えようになるのだと話している。
アナリストらによれば、ICOに対する規制強化の動きを受けて、投資家たちの多くがビットコインを、資金の「安全な避難先」と見るようになっているのだという。
一部には混乱も今後を「楽観視」
ただ、こうした意見の一方で、状況はそう簡単なものではないとする人たちもいる。仮想通貨の投資家向けサービスを手掛ける アイコンプライ・インベスターズ・サービシズのCEOは、問題は単に「ビットコインかアルトコインか」ということではないと指摘する。
「複数の力が働いているダイナミックな市場だ…市場参加者がビットコインを買いに走っているとは考えていない。ビットコインはただ、その他のデジタル資産・通貨とは異なる形で、このところの嵐を切り抜けることができただけだろう」
また、資産運用会社の米クリプト・アセット・マネジメントの社長は、ICOへの投資ができなくなったわけではない点を強調している。オンラインでの金融サービスを提供するイートロ(eToro)幹部も同様の考えだ。
「ICOを通じた資金調達は現在でも可能だ」として、規制で不安を感じている人はいたとしても「わずかだ」と主張。仮想通貨への投資全体には、影響は出ていないと述べている。
ICOに対する取り締まりの強化は、業界にいくらかの混乱をもたらしたかもしれない。だが、アナリストらの間では、デジタル通貨は長期的に見れば、各国の規制によってより多くの恩恵を受けることになると予想されている。