キャリア・教育

2017.11.10 14:30

エンジニアよ、隠れていては勿体ない


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羽田野:日本の技術者は技術力が本当に高いと思います。ただ、会社勤め、とりわけ大企業の技術者は、技術だけ、そして社内だけに専念できる方も多いでしょうが、それが結果的に本人にとって不幸なことだと感じます。確かに外の世界を知らなくても食べていけますが、技術力をその会社の中でしか生かせないのは、もったいない。

自分がうまくやってこられたのは、エンジニアとしてだけでなく、サービス企画部のキャリアもあったから。エンジニアは、営業など他の経験をする機会があるならば、逃げずにやってみるといいと思います。

下農:同じ技術をやっていても、考え方は人によって違います。人と話したり、議論したりしないと、様々な方向性や解釈がわからないと思うんです。だから、技術者も積極的に専門外のところに出ていったりするといいですよね。

まずは自分の考えを伝えること

羽田野:これからの時代、エンジニアも会話力やコミュニケーション力、企画力など、エンジニア以外の部分に長けていれば別の生き方もひらけてきます。基軸となるものを持っているのであれば、使い方はいろいろあるはず。でもその「使い方」を知らないというのが、残念ながら日本のエンジニアの大部分という気がしています。

下農:私が仕事場にしているビルには、数学、物理と天文、両方の研究者がいます。シェアスペースもあって、そこで専門が違う両者が話をしたりすることもあります。互いに「全くわからない」こともありますが、全く違う考えを見聞きし、刺激を受けると、自分の分野で発展させたりできる。そういうコミュニケーションは非常に大切だと思います。

研究者特有ですが、学会や研究会など集まる機会がたくさんあります。そこで「自分とは違う考え方がある」ということを認識することが、仕事を推進していく上でも重要だと感じています。それは国内に限らず、海外においても。そして他の人の意見を知ることと同様に、自分の考えていること、やりたいことをとりあえず、出して言ってみる、ぶつけてみることも大切です。

羽田野:それはエンジニアでも同じことが言えそうです。でも日本でイベント登壇すると、質問コーナーで質問がでることはほとんどありませんよね。

下農:海外だと質問の時間があれば、必ず手が上がるし、スピーカーが座っているところに、みんながさっと寄ってきて、囲んで質問をする。また、「違う意見を持っています」ということも、はっきり言いますよね。

羽田野:日本には、意見をはっきりと言うことがよくないという風潮が今でもありますね。上司には何も言えないとか、みんなが決めたことには反論できないとかも。「能ある鷹は爪を隠す」という気持ちは捨てて、どんどん出したらいいんです。海外の人たちはアピールをするものです。

下農:自分の考えを100%伝えるというのは、日本語でも無理なものなので……。例えば海外でも、そこは思い切って自分の言いたいことを言う。その割り切りが必要なんです。

羽田野:流暢に話したり、きれいな英語を書いたりしなくても、シンプルな英語で伝えればいい。技術の文章は行間を読ませるものではないので、中学校レベルの文法程度でも伝わります。
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構成=星野陽子 写真=藤井さおり

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