車の渋滞だけでなく、歩行者の渋滞にもAIは新たな可能性を提供している。
シンガポール科学技術研究庁とシンガポールマネジメント大学、富士通は2016年8月、約6万人が集まったスタジアムイベントに合わせて、隣接するショッピングモールでAIを活用した混雑緩和を目指す実証実験を行っている。
まず、イベント参加者の一部にスマートフォン用アプリを事前配布して、交通機関の状況、個人の嗜好性などのデータをAIが分析・学習・予測する。AIで得られた結果をもとに、アプリが交通手段を勧めたり、ショッピングモールへ誘導したりして、帰宅手段や時刻の分散化を行った。
上述の実証実験を報じたFUJISU JOURNALによると、「AIで人々の行動を誘導し、混雑を緩和する世界初の試みが実用化に向けて進んでいる」という。
自動運転はすでに実用段階まで進んだ
交通に関する分野でもAIが活躍しているわけだが、やはり最も象徴的なものは乗用車の自動運転だろう。その実用化は技術革新だけでなく、自動車ビジネスを根底から覆すほどのインパクトを与えるともいわれている。
世界中が注目するなか、アウディは世界で初めて「レベル3」の自動運転機能を搭載した新型「A8」を発売する。レベル3とは「条件付き自動運転」のことで、一定条件下のもとで自動運転を行うレベルだ。「部分運転自動化」を指すレベル2とは明らかな差がある。
A8は中央分離帯のある同一車線を60km以下で走るときに、運転操作を引き受けてくれるという。「AIボタン」を押すことでレベル3の機能が作動し、作動中は発進と加減速、操舵が自動制御される。ハンドルから手を離して、テレビを観てもいいというのだから驚きだ。
アウディの本国・ドイツでは、2017年5月に道路交通法の改正案が議会で可決しており、自動化した車両の運転者がハンドルから手を離して他の作業をすることを法律的に認めている。またアメリカでも9月に、米国議会下院で「自動運転法」と呼ばれる法案が通った。車の完全自動運転は、すでに未来の話ではなくなっているのだ。
AIが身近にある未来は、自動車やバスをはじめとする交通分野から切り拓かれるかもしれない。
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