落合陽一(以下、落合):例えば、希望の党は美味しい絶望が欲しい人によって支持されていると思うのです。ディスラプティブなものが求められている。正確に言うと、グレートリセットが欲しい。それが不透明なものであっても、ディスラプティブの向こう側に希望がある気がするのでしょうね。
尾原:今ある限界バーを突破したいけど、その方法が分からない。だからその突破口を欲しがる人たちが、穴を欲しているのでしょう。明確な目的を求めている。
けんすう:前田さんは目的やモチベーションが明確ですよね。
前田:僕は割とギラギラしていますが、野心を表に出さないように、注意深く話すようにしています。
尾原:でも僕は、前田さんのギラギラは別の種類だと思っています。例えば楽天の三木谷さん世代の経営者は、とにかくナンバーワンという形での「達成」を目指した。前田さんの場合は、流しを経験するなど紆余曲折する中でコツコツ取り組む姿勢やスタイルが共感を呼び、応援者が多いのだと思うのです。その時代を経て自活できているので、達成は達成でも、お金という目に見える形ではなく、人生のミッションを達成する感覚に近いのかも。
落合:尾原さんは洞察力がありますよね。人間に興味がなさそうなのに、きちんとサーフィンできる。そこがとても興味深いです。
尾原:お三方のような、めちゃくちゃ歪んでいる前向きな人間は好きです(笑)。さっきあえて「ミッション」という言葉を使ったのですが、ミッションとビジョンという言葉は混同しやすい。ミッションの原義はキリストなのです。つまり、キリストは自分が死ぬことで世界が救われることを分かっていて、自ら十字架を背負って目標を達成するのです。
ミッションとは、「自分の体を滅ぼしたとしても、何をやらなければ自分は自分ではない」という気概。前田さんの色気は、その使命感からくるのでは。この感覚は、乾けない世代が求めている形の究極的な形なのだと思います。
尾原和啓◎執筆・IT批評家。京都大学院で人工知能を研究。マッキンゼー、グーグル、iモード、楽天執行役員、2回のリクルートなど事業立上げ・投資を歴任。現在13職目 、シンガポール・バリ島をベースに人・事業を紡いでいる。近著『モチベーション革命』はアマゾン ビジネス書一位。
落合陽一◎筑波大学学長補佐/図書館情報メディア系助教・Pixie Dust Technologies CEOの他複数の客員教授・理事を兼任。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の早期修了者)、博士(学際情報学)。プリアルスエレクトロニカ、ワールドテクノロジーアワードなど受賞。ザンガレンシンポジウム明日のリーダー200人、ベスト知識人40人、世界経済フォーラムグローバルシェーパーズに選出など。
前田裕二◎SHOWROOM代表取締役。1987年東京生まれ。2010年に早稲田大学政治経済学部を卒業後、外資系投資銀行に入社。DeNAに入社し、13年11月に仮想ライブ空間「SHOWROOM」を立ち上げる。15年8月に当該事業をスピンオフ、SHOWROOM株式会社を設立。同月末にソニー・ミュージックエンタテインメントからの出資を受け、合弁会社化。
けんすう◎nanapi代表。19歳で学生コミュニティ「ミルクカフェ」、22歳で掲示板「したらばJBBS」運営企業の社長になり、Livedoorに事業譲渡。その後リクルート社で3年ほど新規事業を担当し、2009年から現職。2014年にKDDIに売却。