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世界37カ国、700万人が愛読する経済誌の日本版

シーディーアイCEO・岡本茂雄(photograph by Irwin Wong)

日本の介護保険制度によるケアプランの膨大なデータは、「宝の山」だった! スタンフォード大学の天才研究者と組み、AIを使って介護のパラダイムシフトを起こす。


2015年5月、訪問介護サービス大手のセントケア・ホールディングで介護ロボット、AI、認知症ケアの3分野で新規事業開発を担当していた岡本茂雄は、シリコンバレーを訪れていた。医療保険制度改革であるオバマケアの成否を有識者と議論するため、また人工知能(AI)がアメリカのヘルスケア市場においてどのように活用されているのかを確認するためだ。

介護にAIを活用できないか考えていた岡本は、会議で出会った24歳下のAI研究者、スタンフォード大学のグイド・プジオル博士に、ある考えを提案する。

「日本は公的介護保険制度が充実しており、介護サービスや機材のレンタルに対して、要介護者の身体状態に応じて7段階で上限金額の異なる保険給付が国から支給される。国はこの要介護度認定のために、『自分で食事ができるか』『自分で歩けるか』など74項目に及ぶ詳細な身体状態の検査を行っている。この膨大なデータを、AIを使ってより良い介護プランの作成に活用できないだろうか」と。

グイド博士は目を見開いた。そんな介護システムはアメリカにはないし、聞いたこともなかったからだ。「日本の要介護者約600万人×74項目×2000年の制度開始から15年分」ものビッグデータ。「素晴らしい。イノベーションが起こせるよ」と博士は言った。

「博士には、さぞ宝の山に見えたのでしょうね」と岡本は笑う。

さらに博士は続けた。「オカモトさん、日本の企業の中にいては実現できない。会社をつくってください。私もこのシステム開発のための会社をつくります」。それから日本企業の部長とスタンフォード大学の博士は、日米で準備を始めた。

このとき岡本の頭の中には、03年より全国に先駆けて介護予防を実施した埼玉県和光市の取り組みがあった。同市では、市内すべての包括支援センターのスタッフと、サービスを提供する看護師や理学療法士、ヘルパーなどが集まり、新たに認定された要支援者・要介護者の介護計画を検討する「コミュニティケア会議」を毎月2回、開いている。

その方針は明確だ。要介護者や家族に「楽をさせる」ためのプログラムではなく、「自立させる」ため、回復に向けたリハビリテーション中心のプログラムを組む。結果は顕著で、15年度の要介護認定率は全国平均が18.2%のところ、和光市は9.4%へと激減した。要介護2から1、要支援1から介護保険卒業へと、要介護度が減っていく人がたくさんいる。誰もが漠然と、「要介護度は加齢により悪化していくもの」だと思っていたなかで、この成果は衝撃的だった。

「高齢者が要介護者になる2大原因は、骨折と認知症です。これはどちらも、適切なプログラムを組めば、回復も不可能ではない。結果がついてくると、患者や家族、介護にかかわる専門家みんなの意識が変わるんです。『とにかく家族の負担を軽減すべきだ』という一辺倒な思いから、『1年リハビリで頑張れば社会参加できるかもしれない』というように。ただ、そのような綿密な会議がどこの自治体でもできるわけではない。だからこそ、そのノウハウやデータをAIに学ばせて提供できないかと考えたのです」

文=堀 香織 嶺 竜一

 

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