イーロン・マスクも懸念、「AI兵器」による殺戮を人類は防げるか

(Photo by Joe Raedle/Getty Images)


ヒューマン・ライツ・ウォッチをはじめとする世界各国の市民社会は2013年4月、完全自律AI兵器を先制的に禁止するため、「ストップ・キラーロボット」キャンペーンを設立しました。以来4年以上にわたって世界各国の政府に対し、禁止条約制定に向けた道筋を示すとともに、兵器システムを人間がコントロールする必要性を粘り強く説明してきています。

これは道義的な義務であるとともに、国際法を守り、その違反の責任を問うためにも必要不可欠です。国際法違反でロボットを法廷に立たせることに意味はなく、戦争の残虐性の歯止めとなる国際法の意味がなくなる危険性があるからです。

「ストップ・キラーロボット」キャンペーンの働きかけなどの結果、各国は特定通常兵器使用禁止制限条約(CCW)の下で、非公式に議論を始めました。そして、3年を経て、昨年末には突破口が見えたかに思われました。協議の公式化が決まったからです。


しかしながら、ブラジルなど一握りの国々がCCWへの拠出金を支払っていないという理由で、この8月に予定されていたCCWの公式会合はキャンセルされてしまいました。そして、2016年4月以来1年半という国際会議のブランクを経てこの11月、CCWがやっと公式会合を開催します。

この11月の会合に向けて、日本政府など各国は、完全自律型AI兵器を先制的に禁止する国際条約に向けて歩みを進めるべきです。ためらっている時間はありません。

日本政府は、完全自律型AI兵器の開発の意図はないと明らかにしているものの、禁止条約に前向きとは言えません。技術先進国でありながら、完全自律型AI兵器の開発の意図がないと明言した日本は、その先制的禁止への支持を表明し、条約交渉に向けたリーダーになるべきではないでしょうか。「第三の兵器革命」を止めることは、第二の革命といわれる核兵器の惨禍を経験した日本にこそ相応しい、子どもたちそして未来の人類に向けたかけがえのない贈り物なのです。

文=土井香苗

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