だが、CEOの方洪波(ポール・ファン、50)に油断はない。それどころか、「真のグローバル企業になりたい」と、追われるように改革を進めている。
「我々が進むべき方向ははっきりしています。労働集約型からイノベーション主導の企業に変わらなくてはいけません」
実際、方が抱く危機感は正しい。中国市場は成熟し、経済成長が鈍化している。一方で人件費は劇的に上がり、消費に貪欲な中間層の拡大に伴って他社との競争も激化している。中国企業には革新的で洗練された製品を作り、グローバル市場で戦うしか道はないのだ。
そこで方は、東芝ライフスタイルや、イタリアのエアコン製造会社、ドイツのロボット企業を傘下に収め、攻めの経営を貫いている。
「グローバル化は大きな潮流で、特定の個人や国には止められません。中国企業はグローバル化しますよ。この流れは変わりません」
方洪波◎中国最大の家電メーカー「美的集団」の会長兼CEO。華東師範大学で歴史学を専攻したのち、自動車関連の国営企業に就職。1992年に美的集団に移り、2012年に同社の共同創業者である何享健の引退を機に現職に就いた。反グローバル化の動きに対しては、「ものごとは長期的な視点から考えるべき」と楽観的だ。