「他に選択肢がありませんでした。最悪な状況の中、精一杯できることはしました」と、フリーマンは当時を振り返る。家族と折り合いが悪かったフリーマンは、16歳の時に家を出て、高校も中退。一人で生きるために、年齢や経歴を偽って仕事を探し、採用された先では他の誰よりも優秀な従業員になる努力をした。
「教育を受けておらず経験もないことがバレてしまった時に、向上心と能力のある勤勉な人間であると証明できる必要がありました」
やがてフリーマンは、不動産会社とホテルで堅実な仕事に就いた。しかし2007年のある日、個人経営のスパイス店に足を踏み入れた瞬間、ひらめきが訪れる。「その場で恋に落ちました。この素晴らしい空間を大きくしたいと思い、店のオーナーと交渉しました。それがThe Spice & Tea Exchangeの始まりです」
当時、米国の景気は悪化する一方だったため、普通に経営しているだけでは成長は望めなかった。そこでフリーマンは観光客が多い地域にターゲットを絞り、フランチャイズ展開を始めた。「最初の数店舗は試行錯誤しました。限度額まで融資を受けて開業したオーナーたちにはそれぞれ事情があり、より良い生活を求めて仕事を変えた人もいれば、ビジネスを縮小したい人もいました」
それから10年、The Spice & Tea Exchangeは、北はアラスカ州から南はフロリダ州まで各地で展開するチェーンに拡大した。現在、COOのペニー・レーリングと共に同社の女性ツートップを務めるフリーマンは、経済的自立や起業を目指す若い女性を応援する立場にある。フリーマンがかつての自分のような人々におくるアドバイスはこうだ。
「AからZに一足飛びに移ろうとは考えずに、ゆっくり着実に進むこと。自分の原動力になるもの、自分が得意とすることをじっくり時間をかけて探し出し、種をまくこと。そして自分が属するコミュニティの中でメンターや協力者を見つけて、その関係性の中で仕事を見つければ、チャンスは訪れるはずです」
また、リーダーを目指す女性に対しては、他者の才能を見抜く力をつけることが重要だと助言する。「スカウトとしての腕を磨くこと。人々が持つ天性の才能を見つけることです」
適正な人材配置は会社経営の要だ。フリーマン自身は、社交的な性格が会社を大きくする上で功を奏したという。その一方で、起業初期は他人の意見に振り回されないことも重要だと考えている。「誰もが言いたいことを言ってきます。皆、あなたよりも自分の方がわかっていると思い込んでいます。そういった声をふるいにかけることが大事です」