ハリウッド大物プロデューサーのセクハラ問題から考えるべきこと

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私たちの社会にはセクシャル・ハラスメントを許す、あるいは認めるシステム(体制)があることを、18年間の会社人生の中で何度もセクハラを受ける側に立たされてきた筆者は、事実として知っている(キャリアコーチである筆者は、女性の地位向上を目指した執筆・講演活動などを行う)。セクハラは他に誰もいない場所や、相手と二人だけの時にのみ、行われるものではない。

ハリウッドの代表的な映画プロデューサー、ハーヴェイ・ワインスタインが数十年にわたり、多数の女性にセクハラ行為をはたらいてきたと報じられていることは、すでに多くの人が知っているだろう。

一連の疑惑を受けてワインスタインが発表した声明は、多くの人の怒りと否定的な反応を招いた。声明文は、彼が自らの行動の重大さを理解していないこと、自らを擁護しようとしていることを示す内容だった。

残念ながらこうした状況から見て、彼が女性と男性、権力と無敵さなどに関して持つ本当の価値観を示すのは、エンターテインメント界でのこれまでの仕事やその中で見せてきた女性を支援する態度ではなく、閉ざされたドアの向こう側で、彼が取ってきた行動だったことは明らかだ。

ハリウッドだけではない

女性に対するセクハラや差別、権利の侵害については、ワインスタイン以外のリーダーたちについても多くの報道がある(ウーバー や フォックス・ニュースなど)。

ワインスタインが設立した映画会社ワインスタイン・カンパニーのほかの幹部たちや、ウーバーなどのリーダーたちがセクハラの事実を知っていたのかどうか、許していたのかどうかは分からない。だが、明らかに言えるのは、次のことだ。

長年にわたって続けられてきたワインスタインの行動を、ワインスタイン・カンパニーの幹部らが知らなかったとは、とても考えられない──。

だが、それでも彼らはワインスタインを止めようとしなかった。被害者にお金を払って済ませることは、問題への対応にはならない。隠し立てすることだ。

被害者の心理も影響

ハーバード・ビジネス・レビュー誌は昨年、セクハラの被害者の多くがなぜ被害を届け出たがらないのかについて調査を実施。その結果を発表した。主な理由として挙げられたのは、次の3つだ。

・報復の恐怖
・バイスタンダー効果(傍観者効果:自分以外の人がいれば、自らは行動を起こさないこと)
・男性優位の文化の影響力と圧力

女性たちを虐待や嫌がらせ、権利の侵害から守るため、組織や地域社会のリーダーたちに行動を起こさせるためには、どうすればいいのだろうか。私たちが完全な間違いだと知っていることと戦うのを恐れなくなるためには、何が必要なのだろうか?

私たちが今、そして今後、より目を向けていかなければならないのは、私たちが暮らし、働いている「システム」だ。職場や地域社会、家庭といったシステムの中で、リーダーや管理職、取締役といった力を持つ人たちが、いかに女性への違法な行為や差別的な行為を続け、持続可能にしてきたかだ。

世の中には、違法で不道徳な、そして非倫理的な、ひどい行動に出る人は常に存在する。長く続いてきた女性たちへの違法な行為が許されないものとなり、隠されることも促されることも、継続されることもなくなるように、私たちは社会のシステムを変えることができるだろうか。

編集=木内涼子

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