米ハーバード・ビジネス・スクールのフランチェスカ・ジノ教授(経営学)は「同調査により、意思決定プロセスを設計する実用的なツールとしてのチームの多様性の潜在的な価値が明らかになった」と語る。「偏見が意思決定を阻むことが十分に証明された。脳の構造を変えることは難しいが、より多様な視点を持つ意思決定チームにすることで、判断が下される環境を変えることは可能だ」
一方、経営判断の実行段階では、多様なグループの方が運営上の問題に直面しやすいことも判明した。つまり、多様性に乏しいチームは良くない判断をしがちだが、決定事項を実行する段階では、多様なチームの方が問題にぶつかりやすい。
最悪のシナリオは、男性のみで構成されたチームの判断を、多様な性別のチームが実行する状況だ。この組み合わせでは、パフォーマンスが15%低下した。対照的に、最もインクルーシブなチームが意思決定と実行を行ったときのパフォーマンスは、平均よりも60%高いことが分かっている。
残念なことに、意思決定は非インクルーシブなチームが行うことが一般的だ。典型的な大企業では、男性のみのチームが下す判断が全体の約38%を占める。多様性に欠ける企業(シリコンバレーのテック業界など)では格差はさらに広がり、女性を含むチームが経営決断を下す場合は半分以下となる。
米投資会社カウボーイ・ベンチャーズの創業者で、「ユニコーン」(企業評価額が10億ドル以上のスタートアップ)という言葉を最初に使ったアイリーン・リーは「テック業界の競争の激しさを考慮すると、全職務レベルでの意思決定に女性や多様な従業員の関与がなければ、会社の地位が危うくなる」と述べた。
インクルーシブな意思決定を活用すれば、会社の業績改善の可能性が大きく向上する。米コンサルティング企業のベイン・アンド・カンパニーの調査では、意思決定の有効性と会社の業績の間には95%の確率で相関関係があるとされた。会社の意思決定を改善すれば、業績も確実に上がるのだ。
こうしたデータに基づいた分析を見ると、行動を起こさざるを得ないはずだ。リーダーは、現在すでに雇用中の従業員に焦点を当ててインクルーシブな意思決定を行い、数か月にわたって有意義な改善を進めることができる。
あなたの会社が行動を起こさなければ、競合企業に先を越されてしまう。最高の会社こそ、最初に行動を起こすはずだ。