ビジネス

2017.10.28

小売の味方スクエアが、社内に「街」を作った理由

サンフランシスコにあるスクエアのオフィス。個人のデスクは決まっているが、プロダクトベースで席が動く。話すときは大きなテーブルに移動するよう推奨されている。

モバイル決済サービス大手、米国フィンテック企業の雄スクエア。2009年、ツイッター社のファウンダーの1人であるジャック・ドーシー氏により創業されると、業績は急伸。2015年には上場を果たしている。

主なサービスは、スマホやタブレットのジャックに小さなカードリーダーを差し込むだけで、専用アプリを通じていつでもどこでもカード決済を受け付けられるというもの。ユーザーは、商品やサービスを提供する側の企業や個人だ。だがフィンテック市場の競争は過熱するばかり。これまで通りの勢いを維持するのは容易なことではない。

スクエアの命運は、いかに販売者に愛される製品とサービスを作り出していくかにかかっている。ならばどうするか。スクエアが採ったソリューションは、街にいる生活者の感覚をオフィスに植え付けること。それをインスピレーションの種の1つとするためだ。

社内にはローカルの小売店がおかれカフェやデリ、サラダバー、ジュースバーなど、どの店でも同社の製品でモバイル決済ができる。「支払いをして自分たちの製品をテストしたいので、無料にはしません。もっとも会社が援助しているので、コーヒーも1杯1ドルくらいです」と同社のクリス・ゴーマン氏。


オフィス内に地元の小売店を誘致。コーヒーショップは「Andytown SF」の2号店。街にある1号店のデザインをそのままに。

社内を彩るアート作品もローカリティ重視。サンフランシスコMOMAとパートナーシップを結び、地元アーティストの作品を借りている。

販売者の視点を忘れないため、オフィスを「街」に見立てる

空間構成は、ずばり「街」がコンセプト。オフィス中央を貫く通りは「ブルバード」と名付けられ、人が行き交い賑わうメインストリートを思わせる。そのブルバードから一歩脇にそれると、チームがまとまる”街区”になるというレイアウト。

基本的にオープンな執務環境だが、複数人が集まる「ネイバーフッド」や、個人がこもって仕事に集中できる「カバナ」などの小空間が、様々用意されていた。


セミクローズドのスペース「カバナ」は防音室のような構造。プライベートな会話や少人数でのミーティングに使用される。

とはいえ、ブルバード上をアクティブに移動する社員たちは自然、他チームとリソースを共有することになる。また完全にクローズドな場所は1つもなく、会議室もガラス張りにすることで、オフィス全域に透明性を確保した。

「ここではすべての会話が”見える”のです」(ゴーマン氏)。人が簡単にコネクトできる空間をつくり、予期せぬ出会いを生み出す。その点で、コラボレーションに最適化されたオフィスだと言えるだろう。


ライブラリは会話厳禁。「ときに気が散るオープンオフィスでは、集中できる空間も大切」とゴーマン氏。
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text by Yusuke Higashi photo by Hirotaka Hashimoto

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